高速障害復旧のためのサーバを用いたMPLS通信路設定機構の提案と評価

越智 一敦 (0051020)


近年,複数の拠点を持つ組織 (例:企業,複数のキャンパスを持つ大学) では, 組織内文書の共有や遠隔会議などを 実現するために, 拠点間を結ぶEnterpriseネットワーク (事業ネットワーク) を構築している. 事業ネットワークでは, ネットワークの停止により円滑な運営が 阻害されると多くの損失を招くため, ネットワークには高い障害耐性が 必要となる. しかしながら, ネットワークを多重化して 障害耐性を高めた専用網を 広域に敷設するのは構築コストがかかるため, 出来る限り低いコストで 障害耐性の高いネットワークを構築することが 求められる.

そこで,最近では Internet Protocol (IP)ベースの 仮想専用網が構築できる Multiprotocol Label Switching (MPLS) の導入が急速に広まっている. MPLS網では,回線や機器に障害が発生した場合 Label Switched Path (LSP)と呼ばれる 仮想通信路 を再構築する必要がある. これを障害復旧と呼ぶ. 現在MPLSで実現されている障害復旧技術 には, RerouteとProtectionと呼ばれる2方式がある. しかし,Rerouteは, 復旧に時間がかかり, Protectionは, 復旧のための帯域消費が多いという短所を持っている.

そこで,本研究では 消費帯域が少なく,かつ,高速な障害復旧を 実現するための機構として, Rapid-CR-LDPを用いた Server-based Protectionを提案する. この方式は,MPLS網に障害の監視と 復旧処理を行うサーバを導入し, 各ルータからサーバに障害通知を行い, サーバが復旧経路を一括して再構築する 高速な障害復旧方式である. 本提案方式を用いることで障害復旧時間 を大きく短縮できることを シミュレーションと実装を用いて示す. また,最大復旧時間を解析的に見積る ことで,本提案方式をMPLS網へ導入する ための指標を示す.