地理オブジェクトに着目したウェアラブルカメラ映像の検索と自動要約に 関する研究

上田 隆正(0051009)


ウェアラブルカメラの登場と磁気ディスクの大容量化を背景に,人の行動を映 像で記録する環境が整いつつある.ウェアラブルカメラを用いると,旅行や日 常の生活における利用者の視点を録画することができ,利用者の行動を映像と いう形で整理した映像日記の作成や記憶想起支援としての応用が期待されてい る.一般に,映像検索を実現するためには何らかの索引付けが必要であるが, 基本的に毎日撮影されるウェアラブルカメラ映像のデータ量は膨大になるため, 人手によって索引付けを行うことは非現実的である.また,ウェアラブルカメ ラ映像は従来の映像とは異なり連続的であり,切れ目が明確でないため,映像 の境界検出手法のような従来の映像検索の手法は適さない.

本論文では,地理オブジェクトに着目してウェアラブルカメラ映像に自動的に 索引付けを行う手法を提案する.具体的には,ウェアラブルカメラ映像の撮影 位置の近くに存在する地理オブジェクトを特定し,映像の索引とする.この索 引を利用することによって,利用者は「五重塔」などの地理オブジェクト名と いう身近な情報をキーにして映像の検索を行うことが可能となる.また,地理 オブジェクトの索引付けの際に,利用者がその地理オブジェクトに対してどれ だけ近くにいたかという指標と,どれだけ注目していたかという指標を数値化 する.そして,この二つの指標をもとに,利用者の近くに存在した地理オブジェ クトが利用者にとってどれほど興味深い対象であったかを示す「地理オブジェ クトの重要度」を解析し,この重要度をもとに一日の行動に対するダイジェス ト映像を自動作成する.本論文では提案手法によって地理オブジェクトに重要 度を与える実験を行い,本手法の有効性を確認した.これにより,膨大なデー タ量のウェアラブルカメラ映像の中から重要な場面だけをかいつまんで見るこ とが可能となる.