ユーザの主体的なスケジュール調整を支援する秘書エージェントシステム

井垣 宏(0051003)


内容梗概

本稿では,スケジュール調整の社会的な側面を考慮した秘書エージェントシステムの設計について述べる.従来のエージェントシステムは,「エージェントによるユーザの支援=エージェントによる処理の自動化」,というアプローチで開発されており,実際に利用するにあたって,自動化の為の長時間の学習や詳細な事前設定といった負担が生じたり,エージェントが対応を間違えた場合に生じる社会的責任をユーザが負わなければならないという問題点があった.これに対し,提案システムでは,実際の秘書の「社会的責任の発生する意思決定をオーナに代わって勝手にしてはいけない」というポリシーや実務に基づいたリファレンスモデルを基に設計されており,スケジュール調整タスクの構造分析の結果,意思決定が必要な部分とそうでない部分を明確に区別した上で,意志決定を伴う部分については,ユーザにそれを委ねる.さらに,エージェントが構造化されたタスクの進行を管理することで,現状の把握に有用な情報や過去の関連すること例の情報などを整理した形でユーザに提供し,意思決定の支援を行う.このような手法による支援を得ることで,ユーザは現実の状況により即した形で主体的にスケジュール調整を行うことが可能になる.