テレプレゼンスの研究において, ステレオカメラや全方位画像センサを用いた提示手法が提案されているが,前者は見回しに 機械的遅延が生じ,後者は一般的に得ることのできる画像は単眼画像であり,ステレオ 動画像生成手法が提案されているが,生成された画像には一定時間の遅れがあるなどの 問題がある.そのため,テレプレゼンスの条件である奥行きの知覚及びリアルタイムでの 周囲360度の自由な見回しを共に満たすのは困難である.
そこで全方位画像センサHyperOmni Visionを一台搭載した移動ロボットを用い,ロボットの移動時には任意視線方向の単眼動画像を,ロボットが静止した場合には周囲360度のステレオ画像を蓄積した後,任意視線方向のステレオ画像を生成し提示することにより, 操作者へ頭の向きに時間遅延なく追従した自由な見回しと,奥行き知覚を可能とした画像提示手法を提案する. さらに,遠隔操縦システムにおいて操作を支援するため, 超音波センサによる障害物検知及びCGによる進行方向等を提示する機能を提案する. 進行方向における障害物までの距離によりロボットの最高移動速度を調整することで,障害物に衝突することが避けられる.又,CGによる進行方向の提示及びロボットの幅を示す移動経路提示によって,より操作しやすくなると考えられる. 又,コミュニケーションを行なうためにマイクとスピーカをロボット側及び操作者側に設置した.
提案手法を用いて試作した遠隔操縦システムを評価するために, 通信遅延のほとんどない環境で,障害物を避けながら予め指定した経路を移動させるというタスクを設け被験者実験を行なった. アンケート調査による評価で,提案手法の有効性を確認した.