可変構造シミュレーションシステムRiSPの機能拡張

横畠 正大 (9951127)


LSI技術の進歩の結果,従来ソフトウェアで行なわれていた処理を, プログラマブルデバイスを用いてハードウェアレベルで実現することが 可能となってきている. 我々の研究室では,その応用の一つとして,シミュレータのハードウェア化の 一手法を提案するとともに,提案手法を実現するシステム RiSP(Reconfigurable Simulation System with Programmable Devices)の構築を行なっている.

RiSPシステムでは,シミュレーションモデルとして,待ち行列を用いた シミュレーションを扱う.シミュレーションは,種々のパラメータを少しずつ 変えて何度も実行するため,多大なシミュレーション時間を要する. したがって,シミュレータのハードウェア化は,計算時間短縮の点で, 非常に有益である. RiSPシステムの特徴として,解析モデルを記述する工程で GUI(Graphical User Interface)ツールを用いているため, ユーザがより簡易にモデルを記述できる. また,シミュレーションの実行方式に合わせて回路構成が変更できる.

旧RiSPシステムでは直列型と無条件分岐のツリー型構造などの単純なシミュレーション モデルにのみ対応しており,速度面での有用性はあったが, 実用的にシミュレーションを実行できるほど機能面で充実しておらず, 複雑な解析モデルに対応出来ていなかった. また,旧RiSPシステムはシミュレーション実行時の統計情報を取得するための 手段を持っていなかった.

そこで本論文ではRiSPシステムに二つの機能拡張を行った. 一つはRiSPシステムに待ち行列モデルにおける条件分岐機能を追加したことであり, もう一つはRiSPシステムにパーソナルコンピュータとの 通信機能を追加したことである. 条件分岐機能は,RiSPシステムにシミュレーションのパラメータに従って 複数のキュー・サーバを選択する回路を新たに追加し,さらに,この回路が キュー・サーバの選択時に必要とする各種情報を保持するための回路を キューとサーバにそれぞれ追加することで実現した. また,RiSPシステムとパーソナルコンピュータとの通信は, 両者のシリアルインターフェイスを接続して行った. RiSPシステムに通信コントロール回路を実装して,両者の通信を制御した. 機能拡張されたRiSPで待ち行列モデルのシミュレーションを行ったところ, 一番性能の高かった場合で,ソフトウェアでシミュレーションを行う方式に比べ, 200倍以上の速度向上が見込めることが分かった.