提案手法は発声者の任意の1文発声と居室雑音に基づく本人の声を使わない教師なし音韻モデルの適応であり、次の3段階からなる。(1) GMMによる話者モデルを使って音響的特徴が近い話者を選択する。(2) 充足統計量による話者適応を行なって教師なし話者適応クリーンモデルを作成する。(3) 選択された話者の雑音重畳音声データを用いてMLLRによる教師なし環境適応アルゴリズムにより音韻モデルを適応する。この適応音韻モデルの評価として、HMM合成による音韻モデル、不特定話者雑音重畳モデル、さらに教師あり適応との比較を行なった。
本適応アルゴリズムによるモデルで大語彙連続音声認識実験を行なったところ、25dBの雑音環境下においてPTMで86.6\%の単語認識率が得られ、不特定話者HMM合成モデルより約10\%、雑音重畳データからの不特定話者EM学習モデルと同程度の認識率を得ることができ、本論文の環境適応アルゴリズムの有効性を示すことができた。