頭部伝達関数の外挿と移動音源の合成への応用

二宮 知子 (9951090)


頭部伝達関数(HRTF)を用いることによって所望の音源位置からの仮想音源を合成することができる。 しかしながら、あらゆる音源位置からのHRTFを計測することは困難である。 そのため、聴取者を中心とした円周上で離散的に計測したHRTFから他のHRTFを補間する研究が行われている。 しかし、これまでの研究はHRTFの内挿であり、計測したHRTFと同じ円周上のHRTFしか模擬していない。 同様に、移動音源に関する研究も、被験者を中心とした円周上の移動に着目して行われてきた。 しかし実際には円周上を移動するような音源は稀である。

本発表では、被験者を中心とした円周上で計測されたHRTFから、任意の位置のHRTFを模擬するための外挿方法を提案する。 さらに、提案した外挿方法によって模擬したHRTFを用い、直線上を移動する仮想音源を合成し、その再現精度の評価を行った。 その結果、提案手法によるHRTFは、実際に計測したHRTFを精度良く模擬できていることがわかった。 また、滑らかな移動感を得るための、仮想音源の距離間隔と移動速度に関する実験を行った。その結果、移動速度が0.5$¥sim$3.0‾ [m/s]の場合には、距離間隔が0.15 [m]以下であれば、80¥%以上の確率で滑らかな移動感が得られることがわかった。