疎密バネモデルを用いた柔物体の仮想環境下における力覚提示を伴う変形操作

河合 裕文 (9951032)


近年,計算機によって仮想的な環境を構築し,実世界での様々な事象を疑似体験することが可能な仮想現実感技術が注目されている.この技術を用いて,皮膚や臓器といった,柔物体との力覚提示を伴う対話操作を実現することは,より臨場感の高い仮想環境を構築する上で必要不可欠である.

実世界に存在する柔物体は,対話操作によって弾性変形や位相変形が生じる.また,対話操作による柔物体の変形挙動や反力は,柔物体の変形状態や柔物体を操作するマニピュレータの速度に応じて変化したものとなる.そのため,仮想環境下における柔物体との対話操作には,(1)物理法則に基づく実時間での柔物体の挙動表現,(2)対話操作時の速度に基づく相互作用のモデル化の2つの要件を満たす必要がある.従来,有限要素法やバネモデルを用いて,柔物体との対話操作を実現したものがあるが,(1)の要件に対しては実時間性に問題があり,(2)の要件に対しては速度に基づく相互作用としては不十分であった.

本論文では,(1)の要件に対して,一般的に柔物体の表現に用いられるバネモデルを基盤とし,柔物体の変形の度合に応じて,運動計算に必要となる最低限のバネを動的に選択することにより,少ない計算量で柔物体の表現が可能な疎密バネモデルを提案する.また(2)の要件に対して,柔物体を構成する質点とマニピュレータの非弾性衝突として扱うことにより,それらの速度に基く相互作用のモデル化を行う.これらの提案手法を用いて,仮想環境下における柔物体との力覚提示を伴う対話操作システム試作し,本手法の有効性と妥当性を確認した.