皮膚内部歪み分布に着目した有限要素指モデルによる人の物体把持解析
貝野 彰彦 (9951027)
人は初めて見る物体を持ち上げようとした時にも,対象物を壊さず,また落さな
いよう巧みに把持力を制御することができる.この制御法については従来より
様々な視点から研究が行われ,人の基本的な特性が明らかにされてきた。心理
学的な特徴として,物体把持において人が発生する把持力は、物体を持つため
に最低限必要な力におおよそ一定の安全率を掛けた値で保たれるということ、
また神経生理学的な特性としては、人の触覚機械受容器はその周辺部で生じる
せん断歪み分布の変化に応じて応答を示すということ、更に、物体と指の接触
面で生じる初期滑べり現象が把持力制御において重要な役割を果たしていると
いうこと等である。しかし、人はこの現象からの情報をどのように処理して把
持力制御に応用しているのか、そのメカニズムについては依然明らかにされて
いない.
本論文では人の物体把持動作に焦点をあて,まず指先部の断面を楕円形で近似し
た弾性指モデルを生成し、その妥当性について検証する.また,複数の対象物体で
把持動作を行い、動作中の把持力/負荷力の変化を計測し,その結果に基づき有限
要素接触解析を行うことで指内部で生じる応力/ 歪み分布の特徴と人の滑べり知
覚との関係について考察を行う.