修士論文では、
人との深い関わりが求められる共存型ロボットにおいて、
非常に重要な基礎的行動である人の発見及び追跡を
視覚センサのみを用いたシンプルかつ廉価な構成で実現する手法について論じた。
本手法では、実時間の視差画像を利用したことで、人の発見行動と追跡行動とが、
発見した人領域の奥行き情報という不変量に基づく一貫性のある処理として接続される。
視差画像の生成は、再帰相関演算と呼ばれる高速化アルゴリズムを用い、
PC上のソフトウェア処理によって行っている(速度は、15frame/s程度)。
人の発見は、視差レイヤを利用した領域分割処理、人の特徴との照合処理、
フレーム間での照合処理といった手順で行い、
人の追跡は、零視差フィルタを利用した視線制御と、
ロボット自体を移動する車輪制御とを協調させた追随制御により行う。
本研究の視覚処理を移動ロボットに実装し、
実環境で人発見・追跡の実験を行った。
人発見の実験では、ロボットが静止した場合/移動する場合を想定し、
いずれの場合においても良好な実験結果を得ることができた。
人追跡の実験では、人に向かってロボットが正面を向き、
かつ一定の距離を保つように視線と車輪を制御し、
人に追随させる実験を行い、
良好な追随性を確認することができた。