生物における階層的時系列の学習

星野 力(9851096)


人の言語に象徴されるコミュニケーション活動を根本として支える ものに,生物の階層的な系列の学習能力がある.本論文は,主に統計的な学習 理論の観点から,階層系列の効率良い学習に対する必要条件を探り,その学習 法の生物における実現の妥当性を検討する. 統計モデルとしては,連続値, 離散値の両方を確率変数として持つハイブリッド型のベイジアンネットワーク を選択し,モデルのパラメータの学習には,EM アルゴリズムを用いた最尤推 定の枠組をもちいた.モデルの仮定を満たすように前処理された、部分的に定 常で非線形の系列については、それに対応するモデルを用いてうまく予測と分 離を果たすことが出来たが、前処理なしの実物の鳥の波形を予測させることは、 その非定常さの強さからうまく学習を行なうことが出来なかった。これらの結 果により,階層系列学習のモデル化には,学習データに対応した適切な生成モ デルを設定することが極めて重要であることがわかった.このことは,生物の コミュニケーションにおいても,シグナルの送り手と受け手の間のモデル構造 の共通性が重要な拘束条件になっていることを示唆している.