拡張現実感のためのビジョンセンサとジャイロセンサの組合せによる位置合わせ

藤井 博文 (9851093)


拡張現実感とは, 現実環境に対してCG(Computer Graphics)などによって作成された仮想物体を 合成することによって情報を付加する技術のことであるが, その実現のためには,現実環境と仮想環境の位置合わせが重要な課題となる. 拡張現実感のための位置合わせ手法として, 様々な三次元センサを用いた手法があるが, 特殊な装置を必要とするため, 計測範囲が装置周辺に制限されてしまうといった問題がある. 本研究では,計測範囲の制限されないロバストな位置合わせの実現を目的とし, ビジョンセンサとジャイロセンサを組合わせた位置合わせ手法について発表する. 提案手法は,ビジョンセンサとしてステレオカメラを用い, ステレオカメラから得られるマーカの三次元位置情報と カメラに取り付けたジャイロセンサから得られるカメラの姿勢情報を利用し, 位置合わせを行なう. それにより,カメラの平行移動を考慮したマーカの移動位置予測を行なうことによって ロバストなマーカの追跡を実現する. また,位置合わせ範囲を拡大するために, マーカに加えて自然特徴点を併用する手法についても発表する. マーカと同様に自然特徴点に対しても移動位置予測手法を適用して 探索範囲を限定することにより,自然特徴点の誤追跡を減らし,追跡の高速化を試みる. 最後に, 実際にジャイロセンサを組合わせたビジョンベース拡張現実感システムを試作し, 提案手法の有効性を確認するために行なった実験の結果を発表する. マーカの追跡実験とロバスト性の定量的な評価実験を行なうことにより, ビジョンセンサのみによる手法, ならびにカメラの平行移動成分を考慮していない ビジョンセンサとジャイロセンサの組合せ手法と比較して, ロバストなマーカ追跡を実現できていることを確認した. また,マーカに加えて自然特徴点を併用することにより, 計測範囲を拡大した位置合わせ手法を実現した.