複数の通信メディアを利用した階層型データの効率的な転送システムに関する研究
長谷川 創一(9851083)
移動計算機が移動先からデータを取得する場合,一般に携帯電話やPHSなど
の双方向通信メディア(オンデマンド方式)を用いることが多い.一方,新たなデータ
転送手段として地上波ディジタル放送(ブロードキャスト方式)が近い将来に実用化
される見通しになっている.
本発表では,これまで一つの通信メディアを用いて行なっていた通信を,放送と双
方向通信を併用することで,それぞれの通信メディアの問題点を軽減するため
の提案を行なう.各通信メディアを併用するにあたり,データを階層的に表現し,そ
の際にデータを下位の階層ほど公共性が高くなるように階層化する.下位の階
層をブロードキャスト方式を用いて転送し,
上位の階層をオンデマンド方式を用いて転送することにより,1つのデータをより効
率的に転送することが可能になる.
1つのデータを分割して転送する場合に発生する同期,および
キャッシュの問題について議論し,性質の異なる複数の通信
メディアを利用した転送システムの設計を行なった.
さらに,実際のLAN環境を用いてブロードキャスト方式とオンデマンド方式,
およびそれぞれの併用による提案方式を実装し,
ユーザ数および総データ量を変化させて,データ転送の実験を行
ない,平均待ち時間を測定した.その結果,提案方式においては,通信帯域が飽和
するまではブロードキャスト方式よりも平均待ち時間は短く,また,オンデマンド方式
よりもユーザ数の増加の影響を受けにくいことを確認できた.