隠れマルコフモデルの最良パラメータ推定とそのジェスチャ認識への応用

冨田 仁志 (9851072)


時系列データのパターン認識に広く使われているモデルに隠れマルコフモデル(HMM)がある。HMMのパラメータ推定にはEMアルゴリズムが用いられるが、EMアルゴリズムには原理的な問題として局所最適性の問題がある。HMMの各状態の出力が確率分布の混合分布によって与えられる連続混合HMMでは、局所最適性の問題がモデルの頑健性や識別性能に大きな影響を与えるため特に深刻である。連続混合HMMの局所解の原因の多くは、連続混合HMMの持つ状態や各状態が支配する確率分布の不均衡配置にあると考えられる。

本発表では、連続混合HMMの局所最適解からの脱出法として、階層的併合分割型EM(H-SMEM)アルゴリズムを新たに提案する。本手法は、連続混合HMMの状態と分布を階層的に同時併合分割(追加削除)することにより、HMMの持つ状態や分布の不均衡配置を解消し、最良なモデルパラメータを推定する。

また、提案法の有効性を実証するため、人工データとジェスチャデータによる実験を行った。人工データによるパラメータ推定では、従来法に比べ平均で15%対数尤度が上昇した。また、ジェスチャ認識では、従来法に比べ訓練データに対して最大で約2.5%、テストデータに対して最大で約4%認識率が向上した。いずれの実験においても、従来法を上回る良好な結果を得ることができた。