多点制御音場再現における逆フィルタの逐次的設計手法の検討

立蔵 洋介(9851064)


多数の二次音源を用いて多数の制御点を制御することにより、広い領域の音場を再現することができる。このようなシステムを構築するためには、空間伝達特性の影響を除去する逆フィルタの設計が不可欠である。音場再現における逆フィルタは実現可能な信号長で、かつ安定したフィルタとして求めることが必要である。最小ノルム解を用いた手法に代表される周波数領域での設計手法では、時間領域での設計手法に比べて少ないメモリ量と計算量で逆フィルタを設計できる。しかし必ずしも有限長の安定した逆フィルタとして設計できる保証がない。そのために時間領域で設計した逆フィルタに比べて、周波数領域で設計された逆フィルタは再現精度に問題がある。

本発表では周波数領域において設計された多点制御音場再現における逆フィルタの再現精度向上のため、周波数領域での繰り返し処理を用いた時間領域逆フィルタの逐次的設計手法を提案し、数値計算によってその効果を示す。シミュレーションの結果、繰り返し処理を行うことによって各制御点での目標波形との二乗誤差が3-12dB減少した。また作成した再現音を視聴したところ、本提案手法を用いることによりエコー感が低減された。