線形相補性問題によるアメリカン・オプションの評価
山下晋 (9751107)
近年,金融自由化の進展による取引の国際化や,金融技術の革新による取引の
複雑化が急速に進んできている.その代表的なものがデリバティブ(金融派生
商品)である.デリバティブとは,株式・債権・通貨・金利等の原資産の価格
または指標動向から派生した価値や証券のことをいい,各種の市場リスクのヘッ
ジに活用されている.オプションはデリバティブの1つであり,ある商品を,
ある行使価格で,ある一定の期日または,それ以前に取引できる権利のこ
とをいう.権利行使期間の任意の時点で権利行使可能なアメリカ
ンタイプのオプションの場合,このオプションの評価式が線形相補性問題とし
て定式化できることが知られている.本研究では,その定式化された線形相補性
問題をスムージングニュートン法を用いて解き,オプションの価値を評価する方
法を提案する.さらに,アメリカン・オプションの一種であり,ペイオフが満期日
までの原資産の価格経路に依存するアジア型オプションの評価を計算実験し,提
案した方法の有効性を検証する.