物語文中の時間表現の分析とそれを用いた文章の構造化

藤田 早苗 (9751092)


本研究は、文章の粒度にあわせた物語の構造化とその提示を目的とする。構造 化を行う際の手がかりとしては、物語文中で出現する時間表現に着目する。

出来事や文章の粒度と時間とは関係が深く、時間表現はその関係を端的に示し ている。また、物語では、その時間の流れを読者に伝える必要があること、物 語中の時間は単調に展開するのではなく変化があることなどから、時間表現と 内容との関連、物語構造との関係が明確に現れると思われるからである。

まず時間表現を時間スケールと表現形式の二つの観点から分類を行うが、発表 では、とくに時間スケールに着目した分類の紹介をする。

分析は、指標として会話文を用いるものと記述量を用いるものの2 通り行う。 前者の分析によって、人間が具体的だと感じる時間スケールの境界があること がわかった。後者の分析によって、物語の全体構造をみるのに適したスケール が存在し、そのスケールは物語によって変化することがわかった。

最後に、それらの分析から得られた知見を利用して作成した、物語の提示ツー ルの紹介を行う。この提示ツールは、物語を時系列に整理・構造化して提示す るものである。