WWWキャッシュ有効利用のための選択的更新通知機構の設計と実装

須藤 耕司 (9751059)


WWW(World Wide Web)は、利用する際の操作の簡単さやグラフィックや音声などのマルチメディア情報の扱いの容易さにより、今やインターネット上での代表的な情報サービスとなった。しかし、その結果として、アクセスの集中によるサーバ負荷の増大、同一オブジェクトの再送によるトラヒックの増加が大きな問題となっている。

これらの問題の解決方法として、キャッシング代理サーバが広く利用されている。しかし、強制的にオブジェクトを再取得しようとするユーザの存在、複製の有無に関係なく定期的に再取得されるように指定されているオブジェクトの存在、キャッシング代理サーバによる自身の保持する複製とWebサーバ上のオブジェクトの一貫性の判定誤りなどにより無駄な通信が生じている。換言すれば、キャッシング代理サーバが保持している複製が有効に利用されていないと言える。

このような無駄な通信によりインターネット上のトラフィックが増大している。また、Webサーバによっては無駄な通信が負荷の大きな原因になっている。したがって、キャッシング代理サーバが保持している複製を有効に利用して、無駄な通信を発生させないことは大きな意味がある。

無駄な通信を防ぐには、保持している複製が新鮮であるかどうかをキャッシング代理サーバ自身が把握している必要がある。これを実現するための手法としてサーバからキャッシング代理サーバにオブジェクトの更新通知を行う方法があるが、通知の対象となるオブジェクトや通知相手であるキャッシング代理サーバの数が非常に多くなる。したがって、WWWのような大規模なサービスに適用するのは困難である。

そこで本研究では、無駄な通信の原因となっているオブジェクトは全オブジェクトのうちの一部であることに着目し、そのようなオブジェクトを自動的に選出し、それだけを対象に更新通知を行う手法を提案する。これによって、スケーラビリティを確保したまま無駄な通信を削減することを可能にして、サーバ負荷の軽減、トラヒックの減少を実現する。