TCP における統合的輻輳制御機構の実装と評価

熊倉大輔 (9751047)


近年のインターネットの急激な発展と普及にともない、そのトラフィック も同様に増大している。インターネット上で提供される様々なサービスの 中でもとりわけ WWW は広く普及しており、 利用者も多い。そのため WWW はインターネットのトラフィックの大部分 を占めており、このトラフィックに対する輻輳制御や喪失パケットの再送 などの通信制御を効率よく正確に行う技術は非常に重要である。

WWW で扱われるデータは主にテキストや画像であり、それらの転送に 用いられる代表的なアプリケーション層プロトコルは HTTP である。HTTP はリクエスト・レスポンス型のプロトコル であり、典型的な HTTP の通信ではクライアントがリクエストを発し、そ れに対するレスポンスをサーバが返すという一連のやりとりで成立する。

HTTP では通信の信頼性を保証するためにトランス ポート層プロトコルとして TCP が用い られている。TCP の輻輳制御はコネクション毎に独立 して行われるが、TCP の輻輳制御のアルゴリズムは大きなサイズのデータ 転送(バルク転送)においてネットワークの状態をうまく反映した制御ができるように なっている。

HTTP1.0 では1組のリクエスト・レスポンス毎に1本の TCP コネクションを 確立する。WWW で取り扱うデータの多くはサイズが 10KB 以下と小さいことから TCP の輻輳制御のアルゴリズムではネットワークの状態を正しく反映することは 難しい。

本研究ではトランスポート層に着目して上述の WWW と TCP の輻輳制御との相 性が悪いという問題を解決することを目指す。複数のコネク ション間で輻輳制御に必要な情報を集約して共有することによってより有効な 輻輳制御を実現する。本研究ではこのような輻輳制御の方式を統合的輻輳制御 と呼び、その実装を行った。実装を行う上でコネクション間でのデータ転送 の公平性を保つことや、既存の TCP のアルゴリズムとの共存などの問題を 明らかにし、解決した。さらにインターネットで実際に統合的輻輳制御 による通信実験を行い、その有効性を実証した。