遠隔診断のための超音波Bモード像の伝送用圧縮手法

北出 雅央(9751043)


本論文では,超音波診断装置の特徴である患部の実時間での動体 表示が可能であることを生かした遠隔地での実時間での診断を可能と する,超音波Bモード像(以下「超音波動画像」とする)の伝送用圧縮手法につ いて述べる.

提案する画像圧縮手法は,音線情報の抽出と差分画像を用いた圧縮から成る.

まず,超音波画像は,音線と呼ばれる線データ(以下「音線情報」とする)から再構成 することで画像を得ている. "音線情報の抽出"とは,音線情報のみを伝送することで伝送情報量を大幅に削 減するものである.

次に,超音波動画像はフレーム間の相関性が非常に高く,差分画像の輝 度分布は0近傍に大きく偏ったものとなる. "差分画像を用いた圧縮"とは,超音波動画像の差分画像に対し,ハフ マン符号化を施し大幅に情報量を削減するものである.

また本論文では,提案手法の有効性を確認するために,提案手法を実装した 遠隔診断システムのプロトタイプにより,本学と北海道大学附属病院との間で 超音波動画像の伝送実験を行った.その際,通信は衛星回線(1.5Mbps)を介し て行われた. その結果,医師の診断に必要とされる高品質,高フレームレートの画像を, 一般的に普及しているT1回線(1.5Mbps)と同等の回線で安定して伝送できた. さらに,通信にT1回線を用いたとき,遠隔診断システムの伝送遅延は充分に短 く,実時間の遠隔診断を可能とするものであることがわかった.

以上より,提案手法である遠隔診断のための超音波動画像の伝送用圧縮手法 が非常に有効であることが示唆された.