組み込み用フラッシュメモリファイルシステムの設計

石墨 紀孝(9751009)


近年、デジタルカメラや携帯電話など、 小型で携帯用の組み込み機器の普及に伴い、 記憶デバイスとして不揮発性、高記録密度、低消費電力、 低コストであるという利点を持つフラッシュメモリの採用が増えてきている。 デジタルカメラや音声メッセージ録音機など、 大量のデータを高速に扱う必要のある組み込み機器のファイルシステムには 高いリアルタイム性が要求される。 しかし、フラッシュメモリは、 DRAMやSRAMのような揮発性半導体メモリと比較して、 データ書き込みが遅く、 かつデータの書き換えの際には、 時間のかかるブロック消去を必要とする。 また、ブロック消去はフラッシュメモリの劣化につながる、 可能なかぎり避けたい操作でもある。

そこで本研究では、フラッシュメモリのためのリアルタイム性を持つ ファイルシステムを提案し、その設計と実装を行なう。

本ファイルシステムでは、 更新の差分のみを書き込む差分追記の手法により書き込み処理を高速化し、 さらに追記によるリンクリストの更新の手法によりブロック消去の回数を削減する。 また、ファイルの管理にリンクリスト形式を採用することで 特定のブロックへの書き込みが集中しないようにし、 各消去ブロックのブロック消去の回数を平均化して、 フラッシュメモリの寿命を延ばす。

実験の結果、提案ファイルシステムはフラッシュメモリの耐久性を向上し、 数KB以上の単位での連続的な書き込みにおいて、 従来のファイルシステムよりもデータ書き込み量を削減できることが確認された。