3次元線形結合を用いた因子分解法による物体形状とカメラ運動の復元

黄 國彰 (9651128)


動画像から物体の形状, あるいはカメラもしくは物体の運動の復元には多くの 関心が寄せられてきた。その代表的な手法の一つとしてTomasiと金出が提案し た因子分解法がある. 従来の因子分解法は, 殆んど特異値分解を用いて計測行 列と呼ばれる画像内の特徴点の時系列データの最も大きな3つの特異値のみを 見出し, 物体の形状とカメラの運動を表す行列に分解する. しかし, 画像のノ イズが大きく, あるいは追跡の不確かさにより, 4番目の特異値を無視できな くなる. その時, 特異値分解を用いると, 形状や運動を復元できなくなる場合 がある. また, 計算コストの面では, 特異値分解を用いたため高くついた. 本 論文では, それらの状況を想定し, 従来の因子分解法を改良し, その有効性を 示す. Rank-Theoremによると計測行列の階数が3であるならば, 必ず3つの独 立かつ直交するベクトルが存在するため, それらの線形結合で表現できる. 故 に, 手法としては, 計測行列から直接3つの互いに直行ベクトルを見つけ, 1つ の行列として求める. そして, この行列と計測行列を用い, ``3次元線形結合'' というアルゴリズムでもう1つの行列を求める. 最後に, この2つの行列を正規 化すれば, 物体の形状とカメラもしくは物体の運動を復元できる. また, この アルゴリズムが簡単であるため, 従来の手法と比べて大幅の計算コストを削減 できる. 本論文では, 提案手法の全容, その応用と有効性を検証する実験につ いて述べる.