微分不可能な方程式に対する大域的に収束するニュートン法と非線形相補性問題への応用

宮本 基博 (9651108)


非線形相補性問題は経済や工学に現れる数多くの均衡問題を定式化, 解析するのに用いられる, 数理計画法の中の重要な問題である. 近年, 非線形相補性問題をさまざまな関数を用いて等価な非線形方程式に定式化するというアプローチが注目を集めている. ところが, このアプローチで用いられる方程式は必ずしも微分可能ではないため, 滑らかな方程式に対する方法をそのまま適用することは難しい. 本論文では, このような微分不可能な方程式に対する大域的に収束するニュートン法を提案する. 提案する方法では, パラメータが正のところでは連続的に微分可能であり, パラメータが 0 のところで元の方程式と一致するという性質を持つ滑らかな近似関数を用いる. この近似関数を用いて, 近似パラメータも変数として含むような, 元の方程式と等価な方程式を構成し, それに対してニュートン法を適用する. 提案する方法は, すべての反復において滑らかな関数のみを取り扱うこと, また近似パラメータを減少させるための特別な手続きを必要としないという特徴を持つ. 本論文では, 提案した方法によって生成される点列が解に大域的に収束し, セミスムーズの仮定の下で超一次収束することを証明する. さらに, 非線形相補性問題にこの方法を適用し, 数値実験を通して, 提案した方法の有効性を示す.