SSCOP-ATM網のVOD画像通信における再送制御の影響

溝口 良 (9651104)


VOD(ビデオオンデマンド)は,動画像情報を扱うマルチメディアアプリケー ションの一つであり,これをATM(非同期転送モード)網によって提供するこ とを想定した場合,ネットワークの輻輳により,ATMスイッチにおいてセル廃 棄が生じ,その結果ビデオ再生画像が劣化するおそれがある.このため,何ら かの方法でデータ転送の信頼性を確保する誤り訂正機能を持つトランスポート システムが必要になると考えられるが,ATMには厳格な誤り訂正機能がない. そこで本研究では,本来ATM網上でコネクション設定などの信号制御用のプロ トコルとして開発されたSSCOP(サービス依存コネクション型プロトコル)に 注目する.SSCOPは,ATMとその上位層との橋渡しを行なうAAL(ATM適合層)に おけるプロトコルで,特徴的なSelective repeat再送制御機構を備えており, これをVODデータ転送用のトランスポートプロトコルとして応用することを提 案し,複数のビデオストリームがATMボトルネックリンクに多重される通信を 想定して,VOD over ATMの性能評価を行なう.

まず最初に,SSCOPの再送制御機構において重要な役割を果たす,pollingの時 間間隔がSSCOPのパフォーマンスに非常に大きな影響を与えることを説明する. このpolling間隔を適切な値に設定することで,スループットやフレーム遅延 などを最適化することができることを明確にし,その適切なpolling間隔を定 量的に導出する.

続いて,ユーザ側の端末でデータを受信しつつビデオ再生を行なう,逐次再生 型のVODシステムにおいて非常に大きな影響を持つ,フレーム遅延について測 定する.逐次再生のためにユーザ端末において用意されるplay-outバッファが データ受信中にアンダーフローを起こさないように,このフレーム遅延につい て許容値があると考えられ,その値を定量的に導出する.そしてこのフレーム 遅延の許容値により,ATMボトルネックリンクに多重できるビデオストリーム の許容多重数を求めることができる.この許容多重数の観点から,再送制御を 適用しない場合の性能と比較して,SSCOPの再送制御の有効性を検討する.

さらに,VODデータ転送に適するように,不必要な再送を制限すべく,SSCOPの 再送制御機構に変更を加え,その性能評価を行ない,データ遅延の改善策につ いて検討する.