境界音場制御の原理に基づく
多チャンネル音場再現システムの構築

錦戸 信和 (9651086)


空間的に広い範囲の音場を再現する手法の一つとして、境界音場制御の原理 に基づく音場再現の手法が提案されている。

本論文では、この手法を用いて音場再現を行なうための112chの音響入出力が可能なシ ステムの構成と音場の再現手順について述べる。このシステムにより音場再現を行なう 場合、逆フィルタの十分な精度を得るために長いフィルタ長を必要とし、膨大な計算量 が問題となる。

そこで、少ない計算量で十分な再現精度を得るために、逆フィルタの時間信号を求めず に出力信号を計算する手法を試み、実測値を用いた再現実験を行ない検討する。その結 果から、FFTポイント数を一定にしてシステムの規模を増やすことが可能であり、計算 量を減らすことができることを示す。また、本システムで音場再現を行なう場合、FFT ポイント数を原信号の長さを越える最小の2^Nとすることにより、効率よく再現できる ことを示す。さらに、原信号が長い場合の出力信号の計算方法として、FFTを用いた畳 み込みの手法の一つである重複加算法を用いた方法の有効性を検討する。