方向同定を備えたマルチビームマイロホンアレーに関する研究

西岡 良典 (9651085)


テレビ会議システムや音声入力による機器の制御において、離れた、任意 の場所の音を高音質で収録することができれば有用である。しかし、実環境における音声収 録では、壁の反射音により音声が歪み、音質が劣化するという問題が生じる。この 問題に対し、マイクロホンアレーを用いて、直接音だけでなく反射音も利用し、高 音質に音声を収録するマルチビームフォーミング法がFlanaganらにより提案されて いる。しかし、この手法では、音源位置と部屋の構造が 既知という条件が必要であり、実際に利用するには難しい。そこで、本論文では、 音源位置と部屋の構造の情報なしに、直接音と反射音の位置を探索し、マルチビー ムフォーミングを実現する手法を提案する。

提案方法を評価するために、鏡像法によりシミュレーション実験を行った。まず、音 源位置と部屋の構造が未知という条件で、提案法より音源位置を同定した。その結 果、直接音の同定誤差は小さく、反射音の同定位置がアレーの中心と真値座標を結ぶ 直線上にずれる傾向が見られた。さらに、その同定座標を用いてシングルビームフォ ーミングとマルチビームフォーミングの性能をSNRにより評価した。その結果、反射音 のエネルギーが大きい環境において、マルチビームフォーミングのSNRがシングルビー ムフォーミングよりも良いという結果を得た。