そこで,比較的価格の安価なワークステーションやPCを複数台ネットワークに 接続することによって,分散システムを構築する方法が提案されている.この ような分散システムは,安価に構築することが可能である.また,計算量が増 加した場合にも対応することが可能である.
ところで,従来のオペレーティングシステムに,このような分散システムを提 供する場合,2通り考えられる.1つは,分散サーバを構築する方法である.例 えば,NFS(Network File System)や,NIS(Network Infomation Service)を用 い,データの共有化を行うことが上げられる.この分散サーバを構築する方法 は,拡張性,保守性,移植性に優れている.そして,ソースコードレベルでの コンパチビリティを実現できる.しかし,分散アプリケーションのスケジュー リングや,分散共有メモリの実装が困難である.例えば,PVM(Parallel Virtual Machine)は,分散アプリケーションのスケジューリング環境は提供し ているが,分散共有メモリは提供していない.2つめは,オペレーティングシ ステムを直接変更する方法である.この方法は,速度的には優れているが,拡 張性,保守性,移植性に問題がある.この方法は,ソースコードレベルでの, コンパチビリティを要求することも困難であるので,一般には用いられていな い.ここで,別のアプローチが提案されている.オペレーティングシステムを モジュール化し,必要最低限の部分(マイクロカーネルと呼ぶ)と,様々な機能 を提供するユーザプロセスサーバ群に機能を分割する方法である.この方法は, ユーザプロセスとして,様々なサーバを構築することが可能であるので,シス テムを柔軟に設計することが可能である.したがって,分散サーバに分散共有 メモリを実装することも可能である.
そこで,本研究では,マイクロカーネルとして,Machオペレーティングシステ ムを用い,その上で動作する分散資源管理サーバを開発することを目的とする.