携帯型計算機における共有ファイルシステムに関する研究

為近光宏 (9651073)


PFS(Personal File System)はクライアントにキャッシュディスクを用意する ことにより、低速な回線利用時や回線切断時にも利用者に高速なファイルアク セスを提供するファイルシステムである。

NFS(Network File System)のような従来の共有ファイルシステムは、通信路が 恒常的に利用可能か、少なくとも利用可能な際には安定した通信ができること を想定して設計されており、さまざまな通信路を利用する携帯型計算機にきめ 細かく適応できるファイルシステムは存在しない。このような従来のファイル システムを携帯型計算機で利用すると、通信路の性能を活かせずに、極端な応 答性の悪化等の問題を生じる。

PFSでは、4つの動作モードを用意し、利用者の意志と通信路の状態に応じて自 動的に動作モードを切り替える。動作モード毎に異なるキャッシュ更新アルゴ リズムを用いて通信量を変化させることにより、携帯型計算機の置かれる様々 な通信環境に動的に適応する。
動作モードキャッシュ更新アルゴリズム
NFS 互換モード

(NFS Compatible mode)

ファイルアクセスと同期してキャッシュを更新。

高速な通信回線下でファイルの一貫性を完全に保証。

非同期更新モード

(Asynchronous Update mode)

比較的低速な通信回線で利用する。

ファイルアクセスとは非同期にキャッシュを更新。

ファイルの一貫性は保証しない。

読み込み専用モード

(Fetch Only mode)

サーバから読み込むのみで書き戻しは行わない。

PFSに極力通信回線を使用させない。

切断モード

(Disconnected mode)

キャッシュの更新を行わない。

PFSに通信回線を全く使用させない。

動作モード自動切り替えアルゴリズムのうち、通信環境が変化し、より高速な 通信が可能になったことを検出する機能はこれまで実装されていなかった。こ の機能を実装するために、通信環境を監視する2つの方法を提案し、実装した。

  1. PFSの内部でPFS自身の通信内容と所要時間から計算できる実効バンド 幅を用いる方法。

  2. DHCPに改造を加え、インターフェースが利用可能になった時に即時にア ドレスを取得しPFSのプロセスに対しシグナルを送る方法。

複数の方法を組み合わせて用いる事により通信速度変化の検出を適切におこな うことを可能にした。