多値画像およびデジタル文書に対するデジタル透かしの研究

渋谷 竜二郎 (9651056)


デジタル透かしはデジタル著作物の不正利用を抑止するための技法のひとつである。

本発表では、まず初めにデジタル透かしについて述べたい。デジタル透かしは、デジタルデータをユーザに配布する際に、ユーザに気が付かれないような形でユーザID等を配布データの中に埋め込んでおくことで、不正に流出したデータから不正ユーザを割り出すことを目的とする。ユーザによるデジタルデータの不正コピーが技術的に阻止できない以上、そのような透かしを用いて次善の策とすることは意義があることであると考えられる。

デジタル透かしが必要とされるシーンは、ネットワークを介して特定の契約ユーザに情報が提供されるサービス、すなわち電子図書館や有料データベースなどであると、発表者は考え、そこで扱われるデータに関するデジタル透かしを研究してきた。 デジタル透かしは対象となるデータのタイプによってその形態が大きく変わるが、発表者は電子図書館等で扱われるデータのうち、量・質的に重要と考えられる画像データ、文書データに着目し、視覚的秘密共有を用いた多値画像に対するデジタル透かし、 そして、デジタル文書に対するデジタル透かしについて研究を行ってきた。

今回は時間の都合上、デジタル文書に対する透かしに的を絞って発表を行うので、多値画像に対する透かしに関しては論文を参照されたい。

本研究ではデジタル文書に対する透かしとして、デジタル文書に用いられることの多いPostScript(PS)及びPortable Document Format(PDF)に対応したものを提案する。これまで文書データに関するデジタル透かしは、必要とされていたにも関わらず、提案されてこなかったが、これはテキストデータには透かしを埋め込む余地がなかったからである。しかし、実際に利用されているデジタル文書のフォーマットが単純なテキストデータであることは少なく、むしろ、より冗長度の高いPSやPDFが多く用いられている。そこで、それらのフォーマットで記述されたデジタル文書のソースファイルに対する透かしを提案する。