WWWキャッシュシステムの自律分散化手法の開発

坂本 岳史 (9651051)


World Wide Web(WWW)におけるネットワーク・トラフィックの増大や、アク セスの集中によるサーバの過負荷、それに伴う利用者から見た応答時間の遅延 の問題を解決するために、分散 WWW キャッシュシステムが導入されている。 現在のWWWキャッシュシステムでは、参照の対象となるキャッシュサーバ群の 選択等の設定は各キャッシュサーバの管理者が経験をもとに手動で行っている。 よって、ネットワークや他組織のキャッシュサーバの状態の変化に動的に対応 できず、最適な設定を保つことは困難である。本発表では、分散キャッシュに おける各キャッシュの内容を把握するヒントサーバを導入することにより、分 散環境の設定・管理の自動化・簡略化を支援し、またキャッシュサーバ間の問 合わせパケットの削減と、アクセス応答時間の短縮を図る方式を提案する。

現在広く利用されている分散キャッシュシステムでは、キャッシュサーバ間の 通信に ICP(RFC2186)を用いている。ICP では、あるキャッシュサーバから オブジェクトの有無に関する問合わせがあった場合、キャッシュヒットあるい はキャッシュミスという応答しか返さない。本研究では ICP を拡張し、ヒン トサーバとキャッシュサーバとの通信に用いる。ヒントサーバは、それぞれの キャッシュサーバが持っているキャッシュの内容を把握しており、キャッシュ サーバからの問合わせに対し、どのキャッシュサーバが必要なオブジェクトを 持っているかをヒントとして与える。各キャッシュサーバはそのヒントをもと に、クライアントの要求するオブジェクトを取得する。キャッシュサーバは自 分のキャッシュの内容を更新した場合、そのことをヒントサーバに通知する。 これにより、ヒントサーバのデータベースと各キャッシュサーバのキャッシュ の内容の整合性をとることが実現できる。今後の課題として、キャッシュサー バへのヒントとして与えるデータをルーティングやネットワークトポロジを考 慮して計算するなどし、キャッシュサーバのより効率的な分散化を図ることな どがある。

本発表では、提案するシステムの概要とその実装について説明する。また、ヒ ントサーバを用いたときの分散キャッシュシステムの有効性について、実験を 通じて評価した結果に基づいて発表を行う。