脳波をつかったプラントオペレータ思考状態の推定

木佐昌文 (9651039)


近年化学プラントにおいては、分散型制御システム(Distributed Control System : DCS)の導入により、より効率的に製品を製造することが可能となった。その一方 で、プラントオペレータには、より広い知識と高い情報処理能力が求められ、その作 業はますます苛酷なものとなってきている。このためプラントオペレータの負荷を軽 減するオペレータ支援システムを構築することが必要である。効果的なプラントオペ レータ支援システムの構築には、オペレータがどのような状態にあるのかを適切に把 握することが重要である。

本論文では、脳波を用いて運転員の思考状態を推定することを目的とした。 脳波は脳の動的状態を直接に反映しており、人間の思考状態を推定するのに有用な 計測値であると考えられる。そこで脳波からプラントオペレータの基本的な思考状態 を表現する線形モデルを構築した。オペレータの基本的な思考状態として、異常診断 時における推論の進捗状況を表す3種類のモードを考えた。カードゲームやパズル及 び数学問題を用いた基礎実験によって、この分類法の妥当性を確認した。更に、訓練 シミュレータを用いたプラント運転実験に対して思考推定モデルを適用したところ、 観察記録や実験後のアンケート結果からだけでは見逃しがちなオペレータの思考状態 を把握することができた。この結果、提案したオペレータの思考状態の分類法によっ て構築した思考モデルが、プラントオペレータの思考状態のモニタリングに有効であ ることが確認できた。