今日の3次元コンピュータグラフィックスのほとんどは,仮想環境や物体を Polygon based renderingに代表される幾何形状モデルを利用して表現してい る.しかし,幾何形状モデルのみを用いた仮想環境の描画は,その写実性に限 界がある.近年,幾何形状情報のみを用いて仮想空間を表現するのではなく, 実写映像をもとに仮想空間を表現する手法が活発に行われている. これらは,Image based renderingと呼ばれ,実写映像を使用することで写実 性の高いVR環境の映像を提示できる方法として注目されている.しかし,VR環 境内に実世界の幾何形状情報を把握していないため,実世界の現象をシミュレー ションする用途には不適である.
本研究は,3次元形状計測技術とコンピュータグラフィックスのImage based rendering技術を融合した,カラー画像と距離画像の融合によるパノラマ仮想 空間の構築手法を提案する.形状計測システムを構築して,実環境のパノラマ 画像と全周囲距離画像を作成し,環境の距離画像から奥行き情報・形状情報・ 法線ベクトル情報等の空間情報を取得する.そして,パノラマ仮想空間とのイ ンタラクションにおける重要な技術課題の一つである,仮想3次元空間内に置 かれたCGオブジェクトの姿勢決定を,実環境の物理拘束に基づいて実現させる. 3次元形状計測による実世界の空間情報から,CGオブジェクトの振る舞い(姿勢) を決定し,カラー画像内にCGオブジェクトを合成描画する.結果,従来の幾何 モデルのみを用いた仮想環境の描画による写実性の限界を克服し,実時間描画 とインタラクションが可能な,実環境の物理拘束に従う仮想空間を構築する.