まず,健常および骨粗鬆症のラット腰椎横断面画像から皮質骨領域と骨梁領域 の分離処理を行った.皮質骨は非常に硬質な骨組織であり,骨強度に対する影 響が予想されたためである.またこの処理は骨梁構造を後に解析する上でも不 可欠である.実験の結果から皮質骨体積と外力に相関が認められた.
次に,μX線CT撮像空間内での連結骨梁について考察した.大域的に見れば骨 梁は1つの連結成分であるが,μX線CTによる撮像空間は限定されており,局所 的に見れば骨梁は幾つかの連結成分に別れて観測される.そこで3次元ラベリ ング処理を適用し,連結な骨梁の数,最大の連結骨梁体積を解析した.実験の 結果から最大の連結骨梁体積と軸変位に相関が認められた.
さらに,3次元細線化処理を行い,3次元骨梁構造を解析した.この処理により 元オブジェクトのトポロジーを保存した線幅1の3次元画像(スケルトン)が得 られる.つまり骨梁成分に対して3次元細線化を適用することで,骨梁の芯線 が明らかになる.この処理の結果,骨梁ネットワークに含まれる端点,辺,分 岐点などの情報が取得可能になった.またその中で辺数と靭性に,空洞数と最 大弾性力に相関が認められ,骨梁の骨強度に対する影響が確認された.
現在,骨粗鬆症は骨密度を基準に診断されている.本研究結果はその診断基準 以上の相関を持つ骨強度指標が,すべて画像処理から得られることを示してい る.本研究から得られた骨強度指標の臨床利用が期待される.