分散移動システムにおける
前後関係保存放送プロトコルに関する研究
大堀 力 (9651018)
移動計算機と,移動支援局と呼ばれる固定計算機を含むネットワークシステム
を分散移動システムという.本論文は,分散移動システム上の分散プロトコル
について考察する.一般に,固定計算機数に比べて移動計算機数ははるかに大
きいため,プロトコルの計算量が移動計算機数にできるだけ依存しないことが
望まれる.また,移動計算機は固定計算機に比べて計算能力,通信能力の点で
著しく劣っているため,固定計算機より移動計算機の負担する計算/通信の割
合がより小さなプロトコルが望まれる.さらに,移動計算機のハンドオフが頻
繁に発生すると考えられるため,ハンドオフへ対処する際の特別な処理ができ
るだけ少ないプロトコルが望まれる.
放送されたメッセージ間に前後関係(causal relation)が存在するとき,その
順序に従ってメッセージを受信することを保証するメッセージ交換を前後関係
保存放送という.本論文は,移動計算機と移動支援局の階層構造を利用し,メッ
セージの前後関係を保存するための通信オーバヘッドが移動計算機数に依存し
ない前後関係保存放送プロトコルを提案する.提案するプロトコルは既知の手
法に比べて通信オーバヘッドが小さく,移動計算機のハンドオフに対処するた
めの遅延時間と交換メッセージ量が小さい点で優れている.