エンドユーザが理解容易な帳票入力処理の仕様を Java言語を用いて記述する方法

植田佐知子 (9651012)


大規模な企業内ソフトウェアシステムが抱える問題点の一つは,仕様記述に基づくシ ステムの正しい理解がエンドユーザにとって困難な点である.エンドユーザとは,シ ステムを利用して企業内で行われる業務に責任を持つユーザで,業務内容は勿論,シ ステムをも良く理解している必要がある.

本研究では,稼働中の企業内ソフトウェアシステムの帳票入力処理を正しく表現し, かつ,エンドユーザにも理解が容易な仕様を記述する方法を提案する.帳票入力処理 は,企業内の多くのユーザが利用し,システム全体の品質に大きく影響するため,そ の正しい理解がエンドユーザに強く求められる処理である.提案する方法では,業務 用語などエンドユーザに馴染みの深い用語をJavaのメソッドとして登録し,詳細仕様 (プログラム仕様)の記述に用いる.特に,パラメータ数やデータタイプのみが異な る類似の処理に同一メソッドを対応付けることで,記述に用いるメソッド数を減らし ,仕様の理解容易性を高めている.また,仕様自体をシステム(の一部)として実行 できるため,仕様からプログラムコードへの変換の必要はなく,仕様とプログラムコ ードの不一致をも解消することが出来る.

提案する方法を典型的な帳票入力処理に適用した結果,用意した18個のJavaメソ ッドでその仕様が記述可能であることが分った.また,記述された仕様は,業務用語 を多く含み,業務の流れに沿った構造を持つため,エンドユー ザにとって比較的容易に理解できる仕様であることが確かめられた.