進化的計算論を用いたホップフィールド・モデルの挙動に関する考察

撫 利明 (9551081)


本研究はニューラル・ネットワークの分野における連想記憶の問題に関して、その一モデルであるホップフィールド・ネットワークに対しての洞察である。特に、進化的計算論の中の遺伝的アルゴリズムの手法を用いることにより、ネットワークの連想記憶の容量がいかに改善されるかという研究において、ネットワークの挙動と、遺伝的アルゴリズムにより引き起こされる進化の解析を目的としている。

従来、ホップフィールド・モデルのシナプス結合の重みを行列表現したもの、すなわち結合行列に対し、Hebbian-Ruleよる学習を用いてネットワークに連想記憶の機能を持たせていたが、ここではその結合行列の学習に遺伝的アルゴリズムを用いる。遺伝的アルゴリズムは生物における選択・交叉・淘汰という進化の起因となる現象をモデルとした探索アルゴリズムである。これにより、連想記憶の記憶容量が改善されることが確かめられた。本研究では、その結合行列の進化の過程でネットワーク全体としていかなる挙動が示されるのか、また、その進化の仕方にはどのような特徴が見受けられるのかについて解析し、その挙動と経過を追跡・検討する。更に、その結果として、ネットワークの振舞いがスピングラス・アトラクタの影響を強く受けており、その進化の課程においては、カオス的な挙動が見られたことを示す。