ATM 網におけるトランスポート層のスループット解析

築谷 直紀 (9551067)


B-ISDN は超高速・高機能なマルチメディア通信の需要に対応するための通信技術である。 ATM はこの B-ISDN を実現するための伝送交換方式として盛んに研究され、標準化が押し進められている。 ATM において、既存のインターネットのようなデータアプリケーションをサポートするために、ATM とその上位層であるトランスポート層との関係は現在でも盛んに研究が行われている。

ATM における伝送処理単位は固定長のセルであるが、トランスポート層では複数のセルから構成されるパケットを伝送処理単位としているので、 ATM 交換機においてセルが 1 つでも廃棄されるとパケット全体の再送を必要とする。 従って、それ以降のセルの転送はスループット低下の原因となる。 選択セル廃棄方式はこのような無駄なセルをネットワーク中に流さないようにする方式である。

本発表では、トランスポート層の性能を評価するために、まず廃棄パケットの再送を考慮したスループットを解析的に導出する方式を提案する。 本解析は再送パケットにより送信側が飽和している状態を仮定した近似解析であるが、この仮定により考慮すべき状態数を抑えて簡易に数値結果が得られる。 数値結果により、パケット長、ソース数、バッファサイズなどがスループット特性に与える影響を調べる。 更に同様な解析手法を適用して、ATM 網に選択セル廃棄方式を適用した場合のスループットを導出する。 そして数値結果により、選択セル廃棄方式の有効性を明らかにする。