選択問題を解くBSPモデル上の並列アルゴリズムに関する研究

石水 隆(9551006)


 高速計算や大規模データ処理の必要性から,近年並列処理の必要性が高まって きている. しかしながら, 既存の逐次処理と異なり,並列処理では プロセッサ間の通信やデータの分割など,並列処理独自の処理に対する 考慮が必要である. このため, 並列処理に対しては 並列処理用の並列アルゴリズムが必要である.

 本論文では, BSP(Bulk-Synchronous Parallel)モデル上で 選択問題を解く並列アルゴリズムを提案する.  BSPモデルは Valiant によって近年提案された非同期式並列計算モデルである.  このモデルでは,具体的なネットワーク構造やメッセージ配送の遅延などが 同期周期, 通信路帯域幅を表す パラメタ L,g によりそれぞれ抽象化されている.  このため, 並列計算機のアーキテクチャに依存せずに アルゴリズムの設計及び解析を行なうことができるので, 非同期式並列処理のための標準的な並列計算モデルとしての 役割が期待されている.

 本論文では, データ数 n の選択問題に対し,
  内部計算時間 O(n/p+L((log n)/(log(n/(p log n))+log p loglog n)),
  通信時間   O(gn/p+L((log n)/(log(n/(p log n))+log p loglog n))
のpプロセッサ並列アルゴリズムを提案する.  このアルゴリズムは, p≦n/(L log n loglog n), かつ g=O(1) のとき時間計算量とプロセッサ数の積 が O(n) となり, 最適な逐次アルゴリズムの時間計算量とオーダー的に等しい ので, 最適加速な並列アルゴリズムである.