回転可能な非球体プローブを用いた蛋白質 ポケット発見アルゴリズムの開発

宮久保博幸


蛋白質構造から、補因子等の蛋白質機能に関与するリガンドが 結合する部位を発見することができれば、機能推定やドラッグ 設計につながる知見が得られる。リガンド結合部位予測にはポ ケット領域抽出アルゴリズムが用いられるが、既存のアルゴリ ズムは結合リガンドの構造情報を利用していないために結合部 位予測性能が低く、また蛋白質にどのようなリガンドが結合し 得るかという情報が得られないという問題があった。

そこで、本研究ではモルフォロジーを用いた蛋白質ポケット抽 出アルゴリズムを改良し、リガンドの形状を模したプローブを 回転させてポケット抽出操作を行うアルゴリズムを開発した。 これにより、特定のリガンドが進入できる形状の領域のみをポケット として抽出することが可能となる。本アルゴリズムをヘム、FAD 、PLP結合蛋白質に適用した結果、リガンド結合部位予測性能 が向上し、本アルゴリズムの有用性が示された。

さらに、複数種類のプローブによるポケット抽出結果を蛋白質 の特徴量として利用し、特定のリガンドに対する結合蛋白質予 測を試みた。その結果、ヘム、FAD結合蛋白質について一定の 判別性能が得られ、本研究の手法が蛋白質ポケットの特徴抽出 手法としても有用であることが示唆された。