My Thesis (Takashi Fujinami)

卒業論文の概略

 コンフリクト(Conflict)とは、「複数の当事者 (個人・組織・社会など)が、価値観・利害などの点において 対立している状態」と定義できる。コンフリクトの状況に ある当事者は、自分にとってより有利になるように、 コンフリクトの状況を検討し、ある行動を選択する。 全ての当事者が自分にとって有利と思われる行動の選択を 行ってゆくことによって、コンフリクトはある結果に 落ち着くわけである。

 このような、各当事者が行動の選択を行ってコンフリクトの 解決を図る様子を科学的に分析することを目的として 考案された手法の一つに、ゲーム理論に基礎をおき、 メタゲーム理論を発展させたコンフリクトアナリシス (Conflict Analysis)がある。 コンフリクトアナリシスの適用できる事例は、 国家・民族間の紛争といった政治的なものや、 マーケティング戦略などの経済的なものから、 近所のちょっとしたいざこざに至るまで、 非常に広範囲に渡っている。

 また、コンフリクトアナリシスを基に、現実に存在する 様々なコンフリクトの形態に合わせた分析手法も 数多く提案されている。その一つが、二人以上の 当事者が協力をして、互いにとってより有利な行動を 選択するようなコンフリクトを分析するコーリション (Coalition)分析である。

 従来のコーリション分析手法は、協力関係を結ぶ 当事者が、立場的に対等であるようなモデルに対して 適用できるものであり、コーリションを組むプレイヤーの 選好を一つに統合するものであった。そこで本報告では、 まずコーリション分析の 基本となるコンフリクトアナリシスについて述べ、 次に 従来のコーリション手法を紹介し、 さらに新たなコーリション分析手法として、 コーリションを組む当事者間に相対的な力の差が ある場合に適用できるコーリション分析手法を提案している。 最後に 身近なコンフリクト問題を想定し、 シミュレーション分析により本報告の手法の有用性を 考察している。


藤波崇志 (takasi-f@is.aist-nara.ac.jp)
<最終更新作成日 1994年6月23日 >