ソフトウェアモジュールの品質向上を目的とした開発支援

中才 恵太朗 (1821035)


ソフトウェアを利用する上で,ソフトウェアの品質は重要である.ソフトウェアの品質を支えているのは,ソフトウェアプロジェクト管理者,ソフトウェア開発者だけでなく,ソフトウェア利用者も含まれる.よって,ソフトウェアの品質を高めるためには,それぞれの立場からの品質改善のアプローチが必要となる.本研究では,ソフトウェアモジュールの品質向上を目的とし,ソフトウェア開発データの分析結果に基づき,それぞれの立場を考慮して開発支援を行う.そのためのアプローチとして,プロジェクト管理者の利用を前提としたテスト計画の最適化のための支援,開発者の利用を前提としたコーディング品質・効率向上の支援,さらには,ソフトウェア利用者の利用を前提としたOSSコミュニティにおける対応時間の短縮方法を明らかにする.

具体的な成果は次の通りである.(1) 欠陥モジュール予測において,ある特定の予測方法が,どのようなデータセットにおいても高性能となることは少ない.これは欠陥モジュール予測の外的妥当性の問題と呼ばれる.この問題の解決のために,バンディットアルゴリズムを用いることを提案した.実験では3個のデータセットを用いて提案方法の性能評価を行った.その結果,どのデータセットにおいても最も高い,または2番目に高い予測精度となった.(2) プログラム作成時におけるWeb検索ログを分析し,どのようなWeb検索戦略を取るとプログラミングの効率が高まるのかを明らかにした.被験者実験によりWeb検索行動を記録し,そのデータを分析するための新たな指標を定義した.それらの指標を分析した結果,例えばキーフレーズを変更せずに,検索結果ページを多数読み進めることは避けたほうがよいことなどを明らかとした.(3) OSSに対する寄付を表すバッジにより,バグレポート提出後の応答時間が変化するのかどうかを明らかにした.Eclipseプロジェクトにおいて,寄付バッジの有無と,バグレポートに対する開発者の応答時間をQuantile Difference in Differences (QDID)により分析した.その結果,寄付バッジが応答時間を中央値で約2時間短縮することが明らかとなった.