単眼カメラとGNSSコンパスの融合による着桟支援のための船体軌跡推定に関する研究

中村 拓


国内の海運業界では操船者の少子高齢化が進んでいる.経験不足や高齢の操船者にとって,特に着桟の難易度は高い.加えて,岸壁衝突による事故の損害規模が大きいため,岸壁との距離を正確に把握し,着桟を支援するシステムが望まれている.一方,国内外で自動運航船の実現に向けた取り組みが進んでいる.自動運航船の要素技術の一つに自動着桟技術が挙げられている.自動着桟には着桟位置に対する自船の相対位置精度10 cmが求められており,その実現には,自船の軌跡(位置姿勢)と着桟位置をそれぞれ高精度に求める必要がある.

本研究は,現状の着桟支援に,将来的には自動着桟に利用可能な自船の軌跡を高精度に推定する技術の構築を目的とし,GNSSGlobal Navigation Satellite System)コンパスに搭載されたIMUInertial Measurement Unit)と,GNSSの搬送波位相と,単眼カメラによるVOVisual Odometry)を融合し,自船の軌跡を精度10 cmで推定する手法を構築した.

本発表では, GNSSコンパスの性能を向上した手法と,単眼カメラとGNSSコンパスを融合して自船の軌跡を推定した手法について述べる.具体的には,提案手法では,GNSSコンパスを構成する複数のGNSS受信機のクロックを共通化すると共に,GNSS衛星単位の搬送波位相とIMUのタイトカップリングとVOの融合によって,衛星の遮蔽に対してロバストかつ高精度に自船の軌跡を推定している.

発表の最後に,本研究を総括し,今後の展望について述べる.