能動的照明によってシーンを照らし,その応答を計測することでシーンの情報を獲得する方法は,コンピュータビジョンの分野において広く利用されている.このような計測では,計測精度と計測数のトレードオフが存在する.サンプリング間隔を細かくすれば高精度に計測することができるが,計測数が増加してしまう.一方で,サンプリング間隔を粗くすれば計測数を削減できるが,精度が低下してしまう.
本論文では,対象に光を照射したときに得られる光学的応答を多重化して計測することで同時に多数の計測を行い,精度と計測数のトレードオフを解消する枠組みを提案する.多重化により一回の計測で得られるサンプルの数を増やすことで,少数の計測で多数のサンプルを獲得することができる.この枠組みに基づき,光学的応答の多重化計測を用いて光学特性および幾何形状を獲得する.
光学特性の獲得では,散乱媒体を利用して様々な方向へ反射した光を進行方向以外から観測できるようにし,単一の視点で得られる反射方向を多重化する.得られる応答は複数の方向へ反射した光の積算となるため,トモグラフィ法により各方向の反射強度を推定する.
幾何形状の獲得では,照射する光のパターンを時間領域と空間領域で重畳し,同時に計測することで多重化する. 形状計測で利用されているTime-of-Flight法と構造化照明法を組み合わせることで,精度を落とすことなく少数の計測から形状を獲得する.
本発表では,提案する枠組みに基づき光学特性及び幾何形状の獲得について取り組んだ内容について述べる.