TV雑談ロボットの日常利用を実現する ロボットインタラクションデザイン

Interaction Design for TV Chat Robot to Boost a Daily-Use Motivation

西村 祥吾

Shogo Nishiura


年齢を問わず独居世帯が増加する中で,現実世界においての日常的な発話が不足している. この問題を解決するために人に代わってコミュニケーションロボット(以下,対話ロボット)が話し相手となることで,人の日常的なコミュニケーションを促進する取り組みが注目されている.

ここで,対話ロボットに対しユーザが日常的にコミュニケーションを継続するためには,ユーザが対話ロボットを日常的に利用し続けたいという“継続利用意欲”が高く維持され続ける必要がある. この対話ロボットに対する継続利用意欲を促進するための対話ロボットの適切な振る舞いを決定する手法を提案し,対話ロボットデザインに関する体系的知識を構築するための一部となることが本研究の目的である. 日常生活の中においてフリーテーマにて対話を行うロボットに関する既存技術では対話破綻を起こす可能性があり,ユーザの継続利用意欲を保つことは困難である. この問題を解決するために,本研究では対話ロボットとしてTVを見ている人と共に対話を行うTV雑談ロボットを提案する. このロボットはTV番組という特定のテーマに沿った発話をSNSに投稿されるコメントを用いてロボットが行うため,対話内容が文脈に合い且つ新奇性の高い対話を実現する. このTV雑談ロボットに対し,ユーザの継続利用意欲を高めるために必要な手法を人同士のインタラクションに関する心理学的知見を参考に設計した.

各アプローチは人の潜在意識から顕在意識に働きかけるものに分類される. 顕在的な意識に働きかけるアプローチとして,“魅力的な発話文生成”および“臨場感を高める発話”を提案する. 魅力的な発話文生成では,SNSコメント以外の複数の対話手法を組み合わせることによりロボットの人間性を高め,発話に魅力を持たせる手法と,SNSコメントを選択する際個人の趣向を反映する手法の2つを提案する. 臨場感を高める発話では,TV雑談ロボットがSNSコメントを発話するまでに発生する遅延問題を解決する手法と,興奮や笑いといった雰囲気にあった振る舞いをTV雑談ロボットが行うことによってユーザの感情を増幅する手法との2つを提案する.

一方,潜在的な意識に働きかけるアプローチとして人の話し方や振る舞いを模倣して話す“同調対話”を提案する.同調対話はノンバーバル言語によるユーザへの同調をTV雑談ロボットに適用する手法である.

各アプローチが与える影響を調査するために,それぞれの手法が適用されたロボットについて,ユーザの目線に立った実験参加者からの主観的あるいは客観的指標による評価実験を行った.