本研究では,自動走行時の搭乗者の快適性を体型的に分類し,「コンフォート・インテリジェンス(快適知能)」と呼ぶ知的な快適制御の考えに基づき,自動走行レベル4,5の時の搭乗者が感じる,精神的な不安からくるストレスや動揺病を含む不快要因の軽減や抑制手法の提案を行う.
自動走行時のストレスについては,ストレス因子と個人差の関係から,適切なストレス軽減手法を提案する.個人差に関する分析結果から,個々が受けるストレスに対する評価指標に生理指標を用いた計測が有効であることや,ストレス因子に対する個人差を考慮した実験設計の方法を示す.その知見に基づき,動物体からの衝突予測ストレスに対して,凸面鏡およびタブレットデバイスを併用した文字と音声による情報提示によるストレス軽減手法を提案し, 8名の被験者の実験結果から提案手法の有効性を車椅子ロボットによる自動走行システムを用いて検証する.
自動走行時の動揺病については,車酔いとVR酔いの併発による新しい動揺病の存在を明らかにし,自動走行時に発症する動揺病に対して,ベクションと呼ばれる錯覚現象により搭乗者が感じる加速度刺激を弱めることで,動揺病の発症の抑制法を提案する.実験では,車酔いとVR酔いが併発する環境内での走行実験を通して,動揺病指標に基づき重症度を調べることで,新しい動揺病となる自動走行酔いの存在を明らかにする. ベクションを用いた視覚的な抑制手法では,アンケート指標と生理指標,加速度センサに基づき,5名の被験者に対して,動揺病の抑制手法の有効性を検証する.
これらの成果から, 今後の自動走行システムの搭乗者に対する快適性が体系的に分類され, その中でも特に, 社会的普及において重要となる搭乗者の不快要因としてストレスと動揺病における問題を解決するための手法を提案し, 自動走行ストレスの個人差を含む推定に基づいた軽減手法および自動走行酔いの解析に基づいた抑制手法が, 自動走行システムや擬似自動走行システム下で有効であることを明らかにする.