本発表ではファイバや光源を節約した容易な光ファイバ無線 (RoF: radio over fiber) の導入を目的に,イーサネットで使用される光OOK (on-off keying) 信号とRoFのRF (radio frequency) 信号を同時伝送するシステムを提案する. 提案システムについて理論的な信号品質の解析,代表的なパラメータでの実験,計算機シミュレーションによる特性評価を行う.
ブロードバンドワイヤレス通信システムの輻輳を緩和するためには小さなセルを作る小型基地局を多数配置しトラヒックを迂回させるデータオフロードが有効だが,基地局の設置と維持の費用が問題である. 光ファイバ無線技術による中央一括制御を用いることで複数のセルを低コストで運用することが可能となるが,光ファイバの設置を含む導入費用が課題である. 提案するシステムは,光OOK信号を光源とした外部変調によってRoF 伝送を行うことで,既設のイーサネット機器と設置済みの光ファイバ網を利用でき,光ファイバ無線を安価かつ容易に導入できる.
提案システムによって伝送されるRF信号のパワースペクトルやSNR (signal-to-noise power ratio) を理論的に解析し,10G イーサネットを使用した実験結果と比較する. 実験から提案システムが光OOK信号とRF 信号を同時伝送できることが確認できたが,両信号の相互干渉が存在することも明らかとなった. この問題を解決するため,OOK信号のBER (bit error rate) を最小とする最適復調法,およびRF 信号に干渉するOOK信号の抑圧法を提案し,計算機シミュレーションによってその性能を示す. 次に提案した干渉抑圧法のうち,バイアス付き半波整流法についてダイオードを用いた電子回路によって実装できることを実験によって示し,またダイオードの非線形性が干渉抑圧法の性能に与える影響を計算機シミュレーションによって示す. 提案した同時伝送法の応用例として,地下等のGPS (Global Positioning System) 不感地帯へと既設の光ファイバ網を利用して屋外のアンテナからGPS信号を中継し時刻同期を行う方法を提案し,提案法で達成できる時刻確度を実験によって示す.