直接拡散スペクトラム拡散信号とループアンテナアレイを用いた
無線タグの簡易存在領域判定システム
渡部 進一 (1061025)
現在,無線技術およびモバイルコンピューティングの世界において,位置認識の技術が注目を集めている.高解像度な位置情報を必要とするものの他に,特定の領域内に存在するかどうかを知るだけで十分とするアプリケーションが存在する.また,携帯端末は回路やバッテリーの規模に制限があるため,可能な限り演算量が小さい位置検出手法が求められている.そこで,本研究では簡易なハードウェア構成,および低演算量で構築可能な,領域単位で位置情報を判定する手法について検討する.無線タグが送信機に対して2つの領域のどちら側に存在するかを検出するため,送信機のアンテナ構成により送信機に対する2つの領域に異なる向きの磁界を発生させ,長波信号を直接拡散スペクトル拡散(Direct-Sequence Spread Spectrum; DS/SS) 変調した信号を用いることにより,それらの磁界の向きを検出することで領域検出を行う.まず,提案受信機の数学的モデルを示し,そのモデルに特性関数を用いた理論解析を行った結果,受信機の存在する領域の判定誤り率の近似式は受信信号の関数となることが分かった.数値例により,理論解析がシミュレータの結果と十分一致していることが分かった.理論近似式から受信機の存在領域を判定できる場所を評価した結果,位置判定誤り率10の-2乗では送信機を中心に2×3mの範囲で判定可能であった.次に,精度に関しての評価として,4×4mおよび2×4mの空間において平均領域判定誤り率を評価した.その結果,受信信号強度のみを用いて存在領域の判定を行う既存手法に対して0.2 倍から0.4倍の領域判定誤り率の改善が得られた.さらに,演算量の評価として,領域単位で位置を判定する最小二乗法および学習ベクトル量子化法を用いた既存手法と提案手法の演算量の比較を行った.その結果,既存手法に対して提案手法は10分の1以下の演算量であることを明らかにした.本研究で要求されるハードウェア規模はADC 3-bit,およびIntegrate and Dumpフィルタ5-bitで構成できることを示した.