呼吸療法に用いる医療機器の定量的客観的測定評価システムの開発研究

渡邊琢朗(1561021)


呼吸療法とは、呼吸不全患者の肺機能の改善や回復を目的とした治療や運動のことであり、治療内容は多様で多種の医療機器を使用している。呼吸療法に使用される医療機器は、在宅療法などの状況下において使用方法や測定・結果を患者自身に依存しており、その際の定量的客観的な測定・評価は困難となる。誤った使用方法では期待される治療効果が現れず、さらには症状が増悪する危険性がある。またヒューマンエラーによる医療事故が生じる危険性もある。本研究では、呼吸療法に使用される医療機器の使用方法や測定・結果に対し、センサなどを用いて客観的に評価できるシステムを構築することを目的とする。

はじめに、高気圧酸素治療を実施する前の患者所持品点検時に単回使用カイロを検出するシステムを開発した。温度センサを利用したシステムにより、生体に貼付した単回使用カイロを定量的客観的に検出することができた。つぎに人工呼吸器を装着している患者が自身で気管チューブを抜去する動作を定量的に検出するシステムを開発した。発振回路を利用したシステムにより、生体の手指が呼吸回路に接近・接触したことを定量的に検出でき、気管チューブの自己抜管の前兆を知ることができた。さらに、定量噴霧式吸入器では吸気および薬剤噴霧のタイミングを定量的に検出するシステムを開発した。サーミスタとフォトリフレクタを利用したシステムにより、生体の吸気と薬剤を噴霧したタイミングを定量的に検出でき、使用方法や回数などの把握ができた。最後に、非能動型呼吸運動訓練装置の訓練状況や結果などを定量的に観察するシステムを開発した。測距センサを利用し、生体が効果的に呼吸訓練を実施しているか定量的に観察することができる。

結果、呼吸療法に使用する医療機器の運用に際し、開発したシステムを用いることで定量的客観的検出・観察ができた。

これらにより、医療従事者が正確に患者の現状を把握することが可能となり、医療機器を用いた呼吸療法の安全性を高め効果的な治療につながる治療指針を提示できると考え、このシステムを提案する。