製品設計を評価するには物理的なスペックやコストに加えて見た目や使いやすさなどの感性評価が重要な項目となる.ドアのノブ,リモコン,デジカメなど人が使う製品のほとんどには手で持ったり操作したりするための部位や機能形状が備わっている.人が製品を持ったり操作したりする時に感じる``持ちやすさ''という感覚はユーザが製品のイメージを決める際に大きなウェイトを占めていると考えられる.そこで製品の持ちやすさを設計にフィードバックしたいというニーズが高まっているが感性評価は定量的に扱うことが難しく,従来はSD法を用いたアンケート評価などの定性的な解析が一般的であった.
本研究は製品評価システムに向けた腱張力余裕度に基づく持ちやすさ評価手法を提案する.製品を把持する時や操作する時の腱張力を推定することにより,製品の使いやすさ評価に利用する.本発表でははじめに人のピンチング動作中の筋電を計測し,アンケート評価結果と比較する.実験結果より筋電が主観評価に影響を与えていることを示す.次に提案手法の詳細を説明し,提案手法で用いる把持力制御手法と指姿勢推定手法について述べる.また,提案手法を用いたピンチング動作評価と製品評価の例を示す.最後にロボットハンドの試作機による実験を示す.
This presentation will discuss the research work entitled vision-based model-based hand pose estimation for human-robot interactions. A short survey of the state-of-the-art in hand pose estimation will be presented, highlighting the three areas for improvement namely, model calibration, quantitative evaluation, and flexibility. The rest of the presentation will discuss the vision-based model-based approaches taken to address the three issues. These include the calibration of the hand model specific to a user and the application of predictive filtering.
The approaches require the use cameras and hand models to estimate the hand pose. The first approach presents a technique in calibrating the hand model prior to pose estimation. The feasibility of the proposed approach is verified by comparing calibration results to manual measurements of the hand parameters. Moreover, the performance of the proposed hand pose estimation method is evaluated against a system that uses uncalibrated hand model and against data glove measurements. This addresses the first two issues above, hand modeling and quantitative evaluation of pose estimation methods.
Majority of hand pose estimation research find it necessary to fix either the global pose parameter, the wrist position and palm orientation, or the local pose parameters, the finger joint angles, with respect to the camera. This limits the flexibility of systems to accommodate natural hand motion. The second approach applies Unscented Kalman Filter (UKF), a Bayesian-based filter on the hand pose estimation to address this problem. Estimation results of different hand motions of up to 15DOF confirm the feasibility of the system.
情報化の進む現代社会において,ソフトウェアはインフラの重要な構成要素となっている.しかしながら,ソフトウェア開発プロジェクトでは今もなおコスト超過や納期遅れといった“失敗”が相次いでいる.プロジェクトの失敗が減らない理由の1つとして,失敗の原因を分析することが難しいという点が挙げられる.ソフトウェア開発は一般的な物づくりとは異なり,進捗(完成度)がわかりづらい,欠陥が発見しにくいといった特徴(不可視性)がある.そのため,ソフトウェア開発プロジェクトの事後分析は,開発記録やプロジェクトメンバーの記憶を頼りに行うこととなる.しかしながら,膨大な記録から事後分析に有用な情報を取り出すには時間的なコストが掛かる上,プロジェクトメンバーが開発中に起こった出来事をすべて思い出せるという保証はない.
本研究ではこのような問題に対し,ソフトウェア開発プロジェクトの「可視化」を行うことで事後分析を支援する手法を提案する.本手法はソフトウェア開発の際に自動で収集される定量データを入力とするため,開発者に負担を掛けずに適用することが可能である.本研究の具体的なアプローチは,次の通りである.
(1) ソフトウェア開発プロジェクト再現ツール「プロジェクトリプレイヤ」の開発
種々のソフトウェア開発ツールのログデータを用いて開発プロジェクトの流れを再現するツール「プロジェクトリプレイヤ」を開発した.プロジェクトリプレイヤを構成する主なコンポーネントは,収集したデータを整形して表示するための「ビュー」と,プロジェクトの開始から終了までの時間を示す「タイムバー」の2種類である.ビューはMDIで表示され,表示するデータの種類によって6種類に分けられる(イベントリストビュー,グラフビュー,メンバービュー,ファイルビュー,バグビュー,メールビュー).タイムバーは一般的なメディアプレイヤなどと同様に,再生ボタンや停止ボタンによって操作するか,タイムバー上のスライドをマウスで操作することによって任意の時間までスキップして再生することができる.各ビューはタイムバーと連動して情報が更新される仕組みとなっている.
(2) Eメールアーカイブを用いたソフトウェア開発コンテキストの可視化
開発データから得られる情報はあくまでプロジェクトがその時どのような「状態」であったかを数値で表したものであり,何故プロジェクトがそのような状態になったのかという「原因」を調べるためには,プロジェクトメンバーへのヒアリングが必要不可欠となる.ヒアリングは事後分析において有効な手段であるが,実施に掛かるコストが分析者,開発者共に大きい.また,分散開発においてはモジュールごとの開発担当者が曖昧であることも多く,ヒアリングの対象者を特定できないといった問題がある.本研究ではこの問題に対し,開発に用いられたEメールを対象とした分析手法を提案する.メールはソフトウェア開発プロジェクトにおいてよく用いられるコミュニケーションツールであり,数値データからは読み取れない現場の情報が蓄積されていると考えられる.例えば,ミーティング時間の超過が開発の遅れの原因となっていた場合,開発が滞っているという「状態」はソースコード行数グラフなど,数値データの時系列上における変化から確認することができる.だが,何故開発が滞っているかという「原因」をグラフから得ることはできない.このようなとき,同時期に交わされたメールのやり取りを確認すればミーティングの開催といった種々の情報が得られる可能性がある.本研究ではこのような「数値データに直接あらわれない現場の情報」をコンテキストと呼ぶ.しかしながら,手動でのメール確認作業は,件数が多い場合に分析コストが増大する.また,局所的なやり取りだけでは,長期に渡って発生している潜在的なトラブルを発見することは難しい.本手法では,情報検索などで用いられるベクトル空間法とクラスタリング手法を応用し,Eメールから抽出した「話題」を他の時系列グラフと重ねて表示することで開発コンテキストの可視化を行う.本手法は,前述したプロジェクトリプレイヤのグラフビューを拡張して実装を行った.
本研究では,複数のプロジェクト(学生による開発・企業による開発・オープンソース開発)に対し,複数の被験者(研究者・大学院生・大学生・高専生・高校生)を用意し,ケーススタディを通じて本手法の有効性を検証した.検証の結果,プロジェクトリプレイヤを用いることで,分析対象プロジェクトの規模・開発形態に関わらず,事後分析に役立つ情報(各開発者の役割,トラブルの原因等)を短時間で把握できることが確認できた.
蛍光相関分光法(FCS: Fluorescence Correlation Spectroscopy)は光学的に蛍光分子の濃度や拡散係数,分子間相互作用などを非侵襲的に計測する手法であり,生きた細胞における分子動態の測定に広く利用されている.しかし,一般には点検出器を蛍光の検出に用いるため,細胞全体の分子動態の分布を計測するのは困難であった.近年,電子増倍CCD (Electron-multiplying CCD: EM-CCD) カメラを用いたFCSイメージング法が報告された.この手法では,細胞全体で分子動態の分布を得られ,また各点の蛍光強度データが厳密に同時刻であるため隣接点を比較することが可能である.そこで本研究では,EM-CCDを用いたFCSイメージング装置を開発し,その性能について検証実験を行った.本装置では32×32画素の画像を3ms/frameの速度で取得し,FCSによる解析が可能である.
顕微鏡実験への適用に際して,隣接画素間への移動に対する感度特性を検討したところ,FCSによる同時測定ではよく用いられるエバネッセント照明では侵入長 50〜200 nm)が等価画素サイズ(1〜2 μm) より著しく小さいため困難であることが判明した.そこで新たな照明法として臨界角照明法を開発 し,その特性を調べた.臨界角照明法では入射光を基板側から臨界角よりやや小さい角度で入射する.試料側へ透過して屈折した光は境界面とほぼ並行に進みエバネッセント場と同様に表面近傍のみを照明する.実験および有限時間領域差分法(FDTD法)による解析から,臨界角照明法では,水-ガラス系(臨界角61.7°)で波長488nmのレーザー光を用いた場合,境界面から0.5〜2 μmの領域が照明されることが分かった.本照明では,横方向の移動に対する特性と奥行き方向の移動に対する特性が同程度になり,EM-CCDによるFCSイメージングに適することが確認できた.また,θ = 59.5°より大きい角度では光の強度は境界面からの距離に対して指数関数的に減衰することも分かり,検証実験により実証した.
近年,自動車の安全性や利便性の向上を目的として様々な運転支援システムの開発が行われている.運転支援システムには,車両,歩行者やその他の立体物との衝突を防止,軽減するための衝突防止支援システム,自車線からの逸脱に対して警報,自動操舵を行う車線逸脱防止システム,一時停止の見落としに対して警報する一時停止支援システムなどがあり,画像センサ(カメラ)やミリ波レーダ,レーザレーダがセンサとして用いられている.それらのセンサの中で,画像センサは距離計測の点ではミリ波レーダ,レーザレーダより精度が劣るものの,空間分解能は高く,歩行者や白線,標識,信号など自動車の走行時に重要となる様々な対象を検出することが可能であり,人の視覚のように走行シーン全体を認識できる可能性を持っていることから,運転支援システムにおいて重要な役割を果たすことが期待されている.本研究では,車載単眼カメラを用いた走行環境の認識技術として,自車両の運動を推定する手法,道路面領域を推定する手法,歩行者を検出するための手法を提案する.
自車両の運動を推定する手法では,車載単眼カメラで撮影された時系列画像を入力とし,特徴点を追跡することにより,運動の推定を行う.従来手法には,一般道路環境を想定した手法がほとんどなく,道路面にほとんどパターンがないシーンや周囲に他の車両が存在するシーンにおいて自車両の3次元運動を推定することが難しかった.本手法では,一般道路環境においても高い精度で推定が可能となるように,移動物体の検出を行い,運動推定に利用する特徴点を選択する処理を新たに導入する.また,単眼カメラのみを用いる場合,平行移動量の絶対的な大きさ(スケール)は原理的に計算することができないが,提案手法では道路面の位置を推定することにより,スケールを求め,3次元運動のすべてのパラメータを推定する.実走行画像を用いた実験において,提案手法で自車両の運動を高精度に推定できることを示す.
道路面領域を推定する手法では,自車両の運動推定手法により得られる自車両運動,特徴点の3次元位置,道路平面のパラメータを用いて,画像から道路面領域を推定する.道路平面の射影変換に基づく平面領域の検出結果と特徴点の3次元位置から生成される高さ画像を用いることにより,正しく道路面領域を推定することが可能となる.昼夜両方の実画像を用いた実験により,道路面領域が推定できることを確認した.
歩行者を検出するための特徴量の抽出手法においては,画像から歩行者を検出するための特徴量として,勾配方向の2次元ヒストグラムを用いる特徴量を提案する.現在,高い識別性能を実現する特徴量として,勾配方向の1次元ヒストグラム特徴が知られており,様々な歩行者検出手法において,基本特徴として用いられている.提案する特徴量は,近接する画素での勾配方向の共起性を表現することが可能であり,従来の勾配方向の1次元ヒストグラムを用いる特徴より詳細な歩行者形状を記述することができる.歩行者画像データベースを用いた評価実験により,従来手法より高い識別性能を示すことを確認する.
音声や映像によるコミュニケーションのための携帯電話やパソコンなどの通信デバイス,通信デバイスが接続する携帯電話網や固定網などのアクセスネットワーク,通信デバイス上で動作する音声通話やテレビ電話などの通信サービスなどの通信リソースが多様化している.通信リソースの多様化が進むとともに,ユーザが複数の通信デバイスを使用可能な環境(マルチデバイス環境)において,通信リソースを自在に選択し,コミュニケーションを継続しながらも通信リソースを切替え可能な環境が望まれるようになった.
しかしながら,既存の研究では,通信相手の周辺状況や嗜好に応じて通信リソースを切替えることが困難である.このため,通信相手の通信リソースが変化すると,コミュニケーションが途切れてしまうという課題があった.また,マルチデバイス環境下では,通信デバイス間・ユーザ間において,同じタイミングで出力されるべき音声や映像などのメディアデータがずれて出力されてしまい,コミュニケーションの継続が困難という課題があった.
そこで,本研究では,まず,通信リソースの切替えを要求するユーザだけでなく,通話相手の通信リソースを同時に切替え可能とするセッション制御技術を検討・実現する.また,セッション制御技術に加えて,車や船舶にて移動中に通信リソースを切替えた場合においても,各通信デバイスにてメディアデータの受信を停止してから再開されるまでの受信断時間を短縮する経路制御技術を検討・実現する.さらに,通信デバイス間・ユーザ間でのメディアデータの出力時刻を同期するメディアデータ同期技術を検討・実現する.次に,セッションや通信経路の切替えに要する時間やメディアデータの受信断の時間などの観点から性能を評価した結果,提案技術を利用することで通信リソースを切替えることが可能となり,コミュニケーションを継続可能となることを示す.最後に,本研究によって得られた知見をまとめるとともに,提案技術の実用化という観点から残された課題を示す.
様々な細胞機能に関わる細胞‐基質間接着のメカニズムについて,物理的視点による実験的な研究を行った.本論文は,その細胞接着の物理的な性質の計測システムの開発とそのシステムによる細胞‐基質間接着の物理的性質評価の結果をまとめたものである.
本研究で開発した計測手法は,光の放射圧による顕微鏡下での微小物体操作と力計測を基盤技術としており,1つの接着構造レベルでその物理特性を決定でき(Mode I),かつその性質の時間的な変化を計測する(Mode II)ことが可能である.
まずMode I計測法を用いて,細胞‐基質間接着の形成時間による物理的性質がどのように変化するのか計測した.その結果形成開始20分間で急速に物理的な安定性を確立する細胞接着形成の性質を観測することができ,さらにそれは細胞外からの物理的な力印加により促進されることが分かった.また,計測される物理的性質は,アクトミオシン相互作用により発生する力ではなく,細胞膜や接着の構造を支えている構造体としてのアクチンフィラメントにより影響を受けていることを明らかにした.
次にMode II計測法を用いて,細胞‐基質間接着の物理性質の動的な性質を解析した.細胞接着形成初期段階ではダイナミックにその性質が変化しており,物理的性質を指標とすることで接着分子の結合による接着の強化,またその強化を安定化する様子が可視化できた.また,より微小な物理性質を評価するために,本研究で確立した計測法の高感度化に取り組んだ.その結果,最高で80fNの物理的性質の変化を計測できる,高感度計測法を確立することに成功した.
第5章では,インフルエンザウイルス感染による細胞が受ける物理的影響を調べた.その結果,細胞‐基質間接着物理性質はウイルス感染後4時間後に特徴的に変化することを示した.この感染時間と細胞性質の変化の関係は,ウイルス増殖,宿主細胞の免疫系の時間変化と相関しており,ウイルス感染による細胞機能変化と物理的性質の関係性を示唆することができた.
足部の変形や機能の障害は,ヒトの運動機能やパフォーマンスに大きな影響を及ぼす.とくに高齢者では,転倒やバランス機能の低下との関連が指摘されている.従来,足部の臨床的機能評価には,定規や角度計による変形度合の形態計測や静的な筋力計測など,徒手的な評価方法が用いられていた.本研究では,これまで定量的な機能評価が難しいとされてきた前足部に着目して,足部・足指機能向上のためのリハビリテーションやトレーニング,あるいはインソール処方に役立つ,新しい定量的な機能評価手法を開発することを目的とした.
まず,3軸力センサを用いてヒトの足母指の力ベクトルを計測するシステムを開発し,母指の力制御運動特性を計測した.若年者7名を対象とし,椅座位で力センサ上においた右母指で主観的に5つの方向(前後左右、および、鉛直方向)へそれぞれ3種類の強度の力を加える課題を行わせ,課題遂行時の母指の力制御運動特性を記録した.被験者が意図した主観的運動方向と実際に母指が発生した客観的な力の方向は異なり,運動方向間のクロストークおよび個人差が認められた.さらに,このシステムを応用した足指マウスを開発した.
次に,足母指の俊敏性に関する評価手法とそのための計測システムを開発した.このシステムは,左右方向に時間的に正弦波状に変化するターゲットを提示して,そのターゲットの動きにあわせて,力センサの上にのせた母指で左右へ交互に加えた力出力を時系列で計測し,その周波数特性を解析して俊敏性を定量化するものである.若年男性13名を対象とした評価実験の結果,足母指俊敏性と外反母指角度との有意な相関関係が確認された.
最後に,前足部の中でも愁訴の多い横アーチの外部加重に対する変形に着目して,新しくDTMA(Index of Distal Transverse Metatarsal Arch)と名付けた前足部横アーチの定量的評価手法を提案した.この方法は,透明アクリル板上で前足部第2中足骨頭部に上方から既知の加重負荷を加え,足裏から撮影した足底画像から第1中足骨頭−第5中足骨頭間を結ぶラインの濃度値プロファイルを計測し,その積分値を算出するものである.この計測を,加重負荷を0kgから12kgまで順次増やしながら繰り返し,横軸に加重,縦軸に最終値を1とした正規化積分値をとったグラフ上で,その63%に相当する加重を変形指標(DTMA指標)とした.3名の被験者を対象とした評価実験の結果より,この指標が従来の徒手的評価結果と関連を示すことを確認した.この結果はDTMA指標が前足部横アーチの新しい定量的機能評価として臨床的に利用できることを示唆している.
以上のように,本研究では,母指ならびに横アーチ機能に着目した前足部機能評価手法を提案し,これらの計測システムを開発して提案手法の有効性および臨床的応用の可能性を示した.
点字は視覚障害者のための触読表音文字であり,主要な情報獲得手段の一つである.医療現場では,近年の個別化医療の進展に伴い患者個人に対する医療情報の提供が必要になりつつあるが,点字での情報提供への取り組みは進んでいない.従来開発されてきた自動点字翻訳プログラムは,点訳ボランティアの支援という立場で開発されており,しかも医療現場での使用は考慮されていない.そこで本研究では,点字翻訳の専門家と同等の高い点訳精度を実現する方法の解明を目的とする.その際,特に医療機関での使用を可能にすることを目指した.
最初に, 自動点字翻訳プログラムの評価用コーパスとして,新聞記事を基にした通常文書コーパスと特定機能病院の患者向けの文書を含む医療文書を基にした医療文書コーパスを作成した.同時に評価指標として点訳精度を定義した.次に,日本点字表記法2001年版に記載された点字表記規則を分析した.加えて,我々の自動点字翻訳プログラムeBrailleの点訳精度と他の自動点字翻訳プログラムのそれとを比較した.更に,プログラムの辞書への医療用語の追加,統計的学習モデルを導入した分かち書きについて点訳精度又は分かち書き精度の解析の実験を行い,点訳精度の向上に有効な手法の解明に取り組んだ.
日本点字表記法の分析の結果,点字表記規則は,文字種,品詞,活用形,出現形,読み,音韻変化,モーラ(拍)を指標として作成する必要があることが明らかとなった. これらを指標とした点字表記規則を作成しeBraille の点訳エンジンに実装した結果,eBraille の点訳精度は他の自動点字翻訳プログラムよりも有意に高かった.また,点訳精度の向上には点訳対象の文書に適した辞書の語彙構成にすることが有効であることが示された.更に,統計的学習モデルが分かち書きへの適用に有用であることが示唆された.
オフィスや家庭などの一般的な環境において,ロボットが自律的かつ合目的に行動するためには,周囲の状況を能動的に認識しながら概念世界のパターンとなる世界像を形成することが求められる.本研究では,ロボットの移動に伴う見え方の変化から,教師なし学習に基づき,環境内のオブジェクトと視野画像列が示すシーンをカテゴリとして分類し認識する手法を提案する.提案手法は,安定性と可塑性を併せ持つ適応共鳴理論(Adaptive Resonance Theory: ART)を用いてカテゴリの候補となるラベルを生成し,競合と近傍に基づく写像特性を有する自己組織化マップ(Self-Organizing Maps: SOM)を用いてカテゴリとして分類する.また,ARTの追加学習機能とSOMの空間写像特性を用いることにより,オブジェクトやシーンの時間的かつ空間的関係性をカテゴリマップ上に可視化表現する.評価実験では,始めにARTとSOMの基礎的特性を検証した.ARTの基礎実験では,ガボールウェーブレットにより選択的に特徴付けられたパターン変化をカテゴリとして表現した.SOMの基礎実験では,SOMにGrossberg層を追加した対抗伝搬ネットワーク(Counter Propagation Networks: CPN)を用いて学習データを自己写像することにより,汎化能力向上に寄与する新たな学習データを生成した.本手法を視覚移動型ロボットに適用し,オブジェクトとシーンのカテゴリ分類を目的とした応用実験を実施した.オブジェクト分類実験では,一般物体認識分野においてベンチマークとして幅広く利用されているCaltech-256を用いて,教師なし分類におけるカテゴリの形成について評価した.更に,進化的手法により生成した行動セットから,視覚移動型ロボットを用いて実環境中のオブジェクトを分類した.シーン分類実験では,視野画像列が示すシーンの分類により,ロボットの自己位置推定に本手法を適用した.廊下とロビーにおける実験では,ロボットの位置や向きのズレに対して,ロバストな推定結果が得られた.これらの評価実験を通じて,視覚移動型ロボットにおける世界像形成のためのオブジェクトとシーンの記憶パターンを,カテゴリとして表現できる見通しが得られた.
近年の半導体集積回路(VLSI: Very Large Scale Integrated circuit)の微細化、動作周波数向上に伴い、消費電力が増加しつつある。消費電力増加に伴い、VLSIチップ内で発熱が起こりその温度が上昇する。チップの温度上昇は、回路の性能低下や誤動作の原因となる。また、回路を構成するトランジスタや配線材料等の信頼性を低下させる。このように、最近のVLSI開発では、チップ温度を考慮に入れた回路設計が不可欠になってきている。
回路設計段階においてチップ温度を見積るために、一般的にコンピュータによる熱解析が行われる。これは、熱伝導現象を熱伝導方程式で表現したものを有限差分法や有限要素法等で離散化し、生成された線形連立方程式をコンピュータ上で数値的に解く。従来、これらの線形連立方程式の解法として、一般的にLU decomposition (LUD) methodやIncomplete Cholesky Conjugate Gradient (ICCG) methodが使われてきた。しかし、これらの解法では、線形連立方程式の規模(熱解析の規模)が大きくなると、求解時間がかかる、メモリ使用量が膨大になるという問題点があった。
本研究では、前述の従来解法がもつ問題点に対する解決を図るため、計算流体力学の分野で開発されたSymbolic Partial Solution Method (S-PSM) と呼ばれる解法に着目した。この解法をベースとして、複数の物質・材料から構成されるVLSIチップ内やmother boardの多層構造の熱解析に適用できるように拡張した。また、物質・材料からの発熱現象についても扱えるように改良し、新しい熱解析手法を提案した。
本研究では、新しく開発した多層構造の熱解析用の解法をC言語でプログラム化し、コンピュータ上に実装した。性能評価のため、実証実験を行った。1つ目の実験では、mother board上においてチップレベルの熱解析を行い、半導体分野における代表的な熱解析CADツール(ICCG method使用)と比較した。2つ目の実験では、VLSI チップ内部の基本配線構造におけるジュール発熱効果を考慮した熱解析を行い、従来の解法であるLUD methodとICCG methodとの比較を行った。その結果、提案する解法が、求解時間、メモリ使用量及び計算誤差の点において、熱解析CADツールや従来解法より優れていることを確認した。また、熱解析結果についてもリファレンス値と一致していることを確認した。本研究では、提案する解法の有用性を確認できた。
For humanoid robots with many degrees of freedom, a considerable amount of time is required to prepare multiple motions in advance since the number of combinations of joint angle trajectories is quite large. Imitation learning is considered as a suitable approach to initialize parameters in the vast search space.
In this presentation, we introduce our approaches to deal with two major difficult problems involved in the imitation learning paradigm.
1) Dynamical characteristics of a demonstrator and an imitator are different, 2) kinematic properties of a demonstrator and an imitator are different.
For the first problem, we estimate ground reaction force from captured demonstrator’s movements so that an imitator can generate physically consistent imitated behaviors. For the second problem, we find shared low-dimensional latent space between demonstrator’s posture and imitator’s posture. Then, we derive imitator’s movements that correspond to demonstrator's behaviors.
外国語学習ならびに高度な母語学習での発信能力育成は現代社会で欠かせないが、その際、何を伝えるかだけでなくどのように伝えるかを適切に習得する必要がある。特にジャンルや目的、状況に合わせて適切な語彙選択を行ない適切で一貫した文体を使用する、つまり、適切な言語スタイルを駆使することが文語・口語いずれでも重要である。しかし、細分化されたさまざまなスタイルすべてに対面教育のみで対応することは不可能であり、学習者のさまざまなニーズに合わせて発見的な学習を支援する計算機支援が求められている。この問題意識に基づき、教育工学の視点からスタイルの発見的習得を支援するシステムについて、語彙選択、スタイル一貫性、論理構成などの点から研究開発を行なった。
第2章では、こうした研究開発の前提となるスタイルならびにその教育・習得について言語学・語学教育の観点からまとめた上で、さまざまな教授理論、学習理論に基づき教育工学的な学習モデルを構築した。
第3章では、スタイルの使い分けのもっとも基本的な点であるジャンルや目的、状況に合わせた語彙選択の学習支援の一例として、日本語の擬態語・擬音語表現とその専門用語の言い換えの必要性に着目した学習支援システムを構築し、その有用性を検証した。
第4章では、学習者個々人のニーズに合わせた模範スタイルと非模範スタイルをコーパスに基づき動的に検出し、その結果に基づいてスタイルの一貫性の破綻や不備を指摘する発見的学習支援システムを構築し、考察を行なった。
第5章では、論理構成という視点から文章の一貫性を捉え、修辞構造理論について改善を提起した上でオントロジーを構築し、その活用に基づく発信内容作成の支援について議論した。
第6章では、それまでの議論を総合し、現代の高等教育等で着目されつつあるプレゼンテーション教育の支援を念頭に置き、プレゼンテーション作成の教育モデルを構築した上で、対面教育の実例等を参考にした包括的な習得支援システムを提案し、そのプロトタイプの構築を行なった。
第7章では、まとめとして、今後の課題と展望について議論した。
カーナビゲーションシステムや都市計画などに利用されるデジタル地図情報の更新は,少数の調査車両による現地調査などにより行われ,高いコストと時間が必要である.そのため,地図情報を最新の状態に維持することは困難であり,これは正確性が求められる地図にとって致命的な問題である.本研究では,デジタル地図情報の更新を,ドライブレコーダ用の単眼カメラやナビ用のGPSと,多数の一般車両を用いて低コストかつ効率的に実現するデジタル地図情報更新システムの枠組みと画像解析要素技術の提案を行う.
はじめに,デジタル地図情報更新システムの枠組みを提案する,システムでは,調査車両に多数の一般車両を用いる.また安価なドライブレコーダ用の単眼カメラと普及型GPSを用い,実用に耐えうるシステム構成を目指す.次に,システム実現に必要なる2つの画像解析要素技術を提案する.まず前処理として街並画像データベースから入力画像と同一地点を撮影した画像を抽出する必要がある.本研究では多様な撮影条件下で得られた低解像度の画像を,GPSから得た位置情報と撮影条件の変化に対して頑健な段階的な画像間のマッチングにより対応付ける手法を提案する.第一段階では異なる撮影条件下で撮影された画像から,画像補正を行い連続数フレーム繋げた相似した見えのパノラマ画像間での対応付けを行なう.第二段階では,さらに回転・スケール・照明条件の変化に頑健な特徴点のマッチングによる対応付を行う.
2つ目に,異なる日時に同一地点を撮影した画像から街並の変化を検出する手法を提案する.提案手法では,複数の画像から変化領域を抽出し,その結果をもとに多数決的に建物や看板の構造やテクスチャの変化といった街並の変化が含まれる長期的な変化を検出する.変化領域抽出では,計算コストの削減と誤対応の削減のため画像間から拘束条件を推定し,その拘束をもとに最適化アルゴリズム(グラフカット)を用いた画素単位のマッチングを行う.さらに,複数の画像から抽出された変化領域抽出結果を元に街並の変化を検出する.最後に,システム運用時と同じ低画質で撮影条件の異なる画像を用いた実験により,提案手法の有効性を確認した.
石油精製や化学プラントの運転には通常DCS(Distributed Control System)と呼ばれるコンピュータシステムが用いられる。DCSの運転員(オペレータ)に対するユーザーインタフェースとしては、 標準装備された計器表示やトレンド表示などの画面以外にグラフィック画面と呼ばれる種類の画面があり、ユーザーが自由に様々な図的表現を含んだ画面を作成できる。グラフィック画面は、 これに描かれたプロセスフロー図にプラントの運転状態に関する情報を重ねて表現できるため、プラント運転の中心的役割を果たしていることが多い。DCSが利用されるようになってからすでに 30年が経過し、その間のコンピュータシステムの性能向上に伴ってDCSも進化をし、高解像度で高精彩のグラフィック画面を作成することが可能となっているが、グラフィック画面作成のための 業界標準や基準というものは整備されておらず、ユーザー企業が独自のルールを作成し、様々な仕様のグラフィック画面を作成しているのが現状である。
本研究では、まず、グラフィック画面の作成ルールや描画仕様、および変更管理やテスト方法などについての国内各社の実態をアンケート調査して分析を行った。そして、その実態を踏まえたうえで、 ヒューマンファクターの視点から種々の検討を行い、最終的に21項目についてのグラフィック画面描画仕様の標準化案を導出した。
次に、この標準化案が、実際にプラントを運転するオペレータに受け入れられるものであるか否かを検証するために、描画仕様が一つの項目についてのみ異なる2枚ずつのグラフィック画面を50名の オペレータ経験者に見せ、比較調査を行った。その結果、提案するグラフィック画面の描画仕様の標準化案は、ほとんど全ての項目で賛同が得られ、妥当なものであることが検証された。
その他にも、非定常運転操作やアラーム対応操作など、プラント運転における重要な局面において必要とされる監視機能を明らかにし、その目的に合致したグラフィック画面の仕様についての研究を行った。
本研究の成果は、DCSのユーザー各社にとっては自社のグラフィック画面を作成するうえで十分に参考となるものである。今後、提案するグラフィック画面描画仕様の標準化案が各社に採用されて いくことにより、プラント運転の効率化と安全性を高めることに貢献するものと期待される。
フィードバック誤差学習(FEL; Feedback Error Learning)は,生体の運動制御における学習機構であり,川人らによって提案された.生体が運動を行う場合,感覚器(センサ)から受け取った情報を もとに,脳で判断・指令を行い,筋骨格系を駆動する.しかしながら,感覚器から脳を介し筋肉に至る神経のフィードバック(FB)ループにおいては,比較的大きなむだ時間が存在しており,所望の運動 特性の実現はFB制御のみでは困難である.そのため,生体はフィードバック誤差信号をもとに脳内に逆モデルを学習・獲得し,フィードフォワード(FF)制御を行う機能が備わっていると考えられている.
近年,このFELの仕組みは,線形制御理論の分野に取り込まれ,活発に研究が進められている.これらの研究では,川人らとは異なり,逆モデルを線形制御器によって構成している.まず,MiyamuraらがはじめてFELを線形制御器で実現し,その安定性を正実性の仮定に基づいて保証した.次に, Muramatsuらがその仮定を除去した.この2つの先行研究が,FELを線形制御理論の分野で扱った,最も重要かつ先駆的な研究である.
FELでは,厳密にプロパなプラントを制御する場合,プラントの出力と目標値信号が同様の遅れを持つようにプレフィルタ(prefilter)を利用しなければならなかった.そのため,従来法では プラントの逆モデルのみならず,プレフィルタの既知パラメータをも一緒に学習してしまう冗長性があった.そこで,本論文では,第1に,この冗長性を排除するために,Miyamuraらの手法をもとに, プレフィルタの状態変数をFF制御信号にも利用する,プレフィルタ統合型FELを提案する.これにより,逆システムの未知パラメータのみを学習できるようになる.第2に,このプレフィルタ統合型 FELを改良し,FF制御器の構成を少し変更した後,Muramatsuらの発想をもとに,正実性によらない学習則を導く.この学習則では,未知パラメータに線形な誤差モデル(追従誤差ではなく新しく定義 された誤差)を用いているため,可変ゲイン型をも利用可能になる(Miyamuraらの学習則は固定ゲイン型であったが,可変ゲイン型を利用できることで,学習速度の点で大変有利となる). 第3に,FELの2自由度構造の複雑さをはじめ,正実性によらない学習則の導出に伴う副作用で閉ループ系に時変ブロックが挿入されてしまうという問題点等を解決するため,仮想FB誤差学習 (VFEL; Virtual FEL)を提案する.
プラントアラームシステムは、オペレータがプラントの異常を早期に検知し、正確な異常診断を行い、適正な対応操作をするために必須のインタフェースである。監視変数ごとに、安全、品質、 コストなどの目的に応じて異なる管理範囲が定められ、これらの範囲を逸脱したときアラームシステムは警報を出しオペレータに注意を喚起する。不適切なアラームシステムはアラームの洪水や 迷惑アラームを引き起こし、オペレータの誤判断や重要アラームの見落としを招く。本研究では、アラームシステムの性能を定量的に評価するための手法を提案し、アラームや操作のログデータから 連鎖アラームや繰り返し操作などを抽出するイベント相関解析の有効性について実プラントデータにより検証を行った。
はじめに、アラームシステム適正度を8つの観点から定量的に評価するためのアンケート法を提案した。このアンケートを大型化学プラントであるエチレンプラントの現役オペレータを対象に実施 した結果、オペレータの運転経験の違いによってアラームシステムの評価結果が異なることを示した。
次に、個々のアラームや操作の発生頻度ランキングに基づいて不要なイベントを見つける「トップ10アプローチ」を実プラントの運転ログデータに適用し、アラーム削減が進んだプラントでは上位 にランクされるアラームや操作イベントの割合が小さく、アラームの削減効率が低くなることを示した。
最後に、新たな不要イベントの抽出方法として、単独イベントに着目するのではなく、複数のイベントをグループ化し、グループ単位で削減するイベント相関解析の有効性を検証した。プラント ログデータに対してイベント相関解析を用いることによって、イベントデータを関連するイベント群にグループ化することが出来、この結果を用いて不要アラームや不要な操作を見つけられることを 示した。そして、イベント相関解析をエチレンプラントの実データに適用した結果、膨大なログデータから連鎖アラーム、ルーティン操作を見つけることが出来、不要アラームや不要操作を抽出できることを確認した。
提案手法は、シンプルな手法であるため現場のエンジニアが使いやすい。今後、さまざまな化学プラントへの適用が進み、プラントアラームシステムの適正化に役立つことが期待される。
経済のグローバル化による競争激化や地球温暖化問題への対応のため,化学プラントの効率的な運転は大きな課題となっている.化学プラントの大規模化,複雑化が進む中,刻々と変化する外部条件に対応してリアルタイムに最大効率の運転条件を求める最適化手法は,省エネルギーを重視したプロセス制御のための要素技術として重要性を増している.
化学プロセスの最適化問題は一般に大規模な非線形計画問題として定式化されるが,評価関数や制約式に含まれる変数は大部分が線形であり,非線形変数はわずかである場合が少なくない. 本研究では,非線形変数に比べて線形変数の数が圧倒的に多いという化学プロセスの最適化問題の特徴に着目し,原問題を線形部分と非線形部分に分解して最適解を求める新しい分解法を提案した.
提案手法が対象とする問題は,従来の分解法が対象とする問題の拡張であり,従来法では扱えなかった線形変数の係数が非線形変数の関数という項を含んでいる.このような項は化学プロセスの非線形計画問題に頻繁に見られるため,提案手法は化学プロセスの問題を中心に,従来法と比べてより広い範囲の非線形計画問題に適用できる.
提案手法は原問題を非線形変数からなる親問題と線形変数からなる子問題に分けて解くため,非線形変数に比べて線形変数の次元が非常に大きい問題を効率的に解ける.また,非線形変数のみの親問題の評価関数の勾配を少ない計算量で求めるための解析的な方法も示した.親問題,子問題を解くために一般のソルバーが利用可能であり,実際の適用も容易である.さらに,適当な仮定の下で,提案手法で得られる解が原問題の十分よい近似解であることを理論的に示した.
提案手法をRosen-Suzukiのテスト問題を用いた数値実験により評価し,原問題を分解せずにそのまま非線形計画手法を適用して解く非分解法に比べ,計算時間の点で線形変数が多くなるほどより有利になることを明らかにした.また,提案手法により得られた解が原問題の十分よい近似解であることも確認した.
提案した分解法は,最適化問題の評価関数や制約式が線形変数と非線形変数という2種類の変数を含んでいることに着目した手法で汎用性が高い.今後,同様な特徴を持つ様々な分野の非線形計画問題への適用が期待できる.
低侵襲な治療である内視鏡下脊椎後方手術(Microendoscopic Discectomy)は内視鏡を用いるため、計画した領域に対して適切に切削を行うためには、術者に高度な技術を要求するが、現状では有効な術前計画手段が講じられていない問題がある。
本研究では、内視鏡下脊椎後方手術に対して、汎用的な二次元ポインティングデバイスを用いた術前計画支援フレームワークを提案する。本フレームワークでは下記の特徴を持つ。(1)ユーザはボリュームレンダリング像上の3次元領域に対して直接切削領域の入力が行える。(2)よりシンプルなインタフェースを提供するために、本フレームワークではマウス等の汎用的な二次元ポインティングデバイスを利用した3次元領域入力手法を導入している。(3)距離値に基づいた動的なボリュームエイリアシング除去手法を用いて、インタラクティブに切削境界の高精細表現が行える。(4)切削の深さを管理し、ボリューム切削における制約を導入することによって、意図しない領域への誤切削を軽減できる。(5)オクルージョン領域への切削に対する術前計画を支援するために、任意断面を用いた切削領域入力手法を開発した。(6)内視鏡の挿入位置および挿入方向の術前計画における検討および意思決定を支援するために、魚眼内視鏡のレンズ特性を反映したレンダリング手法を導入した。
いくつかのサンプルボリュームデータを用いた検証の結果、提案フレームワークによって、ユーザは二次元ポインティングデバイスを用いて、脊椎などのボリュームレンダリング像上の複雑な領域や、オクルージョン領域に対して、簡便な操作で切削領域の入力を行えることが分かった。また、提案手法では、インタラクティブにクリアな切削境界を提示できた。実症例データを用いた検証の結果から、ユーザはインタラクティブに実際の切削領域と同等な3次元領域を定義できることを確認した。また、専門医による評価として、魚眼内視鏡の視野の歪みが再現されており違和感ないとのコメントを得た。
The lack of internal information of words has become a crucial problem for morphological analysis systems, especially for languages like Chinese and Japanese, in which long un-separated characters are often used as one single unit. This problem gets even clear when one apply those segmented results of sentences to upper NLP applications such as machine translation. If there is no information of internal structures of long words, it is difficult to match the correct meaning between two languages' word pair.
In order to solve the remaining problems and further improve the performance of Chinese morphological analysis system, we believe it is necessary to first analyze the internal structure information of Chinese synthetic words. If we can automatically gain the knowledge of internal structures of words, we can use these information to create a well-formed synthetic word corpus, which turns out to be a flexible knowledge base for morphological analysis process.
Since Chinese synthetic word, which has the most complex construction pattern, has no clear definition until now, we try to define this concept at the beginning of this research and describe the differences between single-morpheme word and synthetic word within Chinese language. Then we discuss the categorization of Chinese synthetic words according to their internal syntactic relation or morphological structure on linguistics base.
Next, according to these concepts and categories, we propose several approaches based on machine leaning methods to parse internal structures of synthetic words, and conduct experiments for each of these approach. After trying to parse synthetic words based on general adjacency model and dependency model, we use large-scale n-gram data and customized CYK algorithm for analysis. By using this method, we can take the special merging construction pattern into consideration in actual analysis process. And we can gain the best word internal structure result after selecting from a complete searching space constructed by CYK algorithm.
At last, we describe an extendable lexicon management system that we created for easy word internal structure annotation. After explaining the motivation and reason of system development, we show how easy to use it to manage normal lexicon information and annotate internal structures of synthetic words. Then based on the user experiences and feature requests until now, we describe some shortages of current system. And we also propose several possible improvements that could be make in future in order to let this system be much more user-friendly and powerful for managing all kinds of lexical resources.
ヒューマノイドに代表される高機能ロボットに不可欠な機能のひとつとして,ロボット自身が行動を獲得することがあげられる.このような機能は,エンドユーザがロボットに要求を伝えることを容易にする.本研究は,目的に基づくタスク設計システムの開発を目的とする. 具体的には,本研究は「高度にモジュール化された学習システム」を提案した.このシステムでは,強化学習手法を始めとする基本的な学習アルゴリズム群がモジュール化され,学習システムを構成する.さらに,これらのモジュール群は学習戦略モジュールも含む.学習戦略とは,強化学習を改善する手法を意味する.例えば次元縮約,階層化,転移学習などである.学習戦略モジュールは,戦略に基づいて基本モジュールを生成する.さらに,個々のタスクに対して適切な学習戦略モジュール群を選択する,「学習戦略決定アルゴリズム」を提案した.このように,提案システムは学習戦略群を統合する.
本研究では,学習戦略を定義するための要素技術として,DCOB 及びダイナミクスモデルの分離手法を提案した.DCOB は規模の大きいタスクを扱うための,行動空間を生成する手法である.DCOB の拡張として,WF-DCOB を提案した.本論文におけるいくつかの学習戦略は,WF-DCOB を用いて定義される転移学習である.ダイナミクスモデルの分離手法は,タスク不変の要素の抽出を可能にする.これによって,あるタスクで学習したダイナミクスモデルをほかのタスクのモデルに転移することが可能になる.加えて,提案手法を実装するために,オープンソースの強化学習ライブラリ SkyAI を開発した.
これらの要素技術に基づいて,学習戦略群を定義した.学習戦略群と,学習戦略決定アルゴリズムを合わせて学習戦略フュージョンと呼ぶ.学習戦略フュージョンの最大の特徴は,複数の学習戦略を単一のタスクに適用することができ,さらに学習戦略群の組合せや適用する順番も自動的に決定される点である.
本発表では,提案手法のうち,DCOB,WF-DCOB,学習戦略フュージョンを中心に,高度にモジュール化された学習システムを紹介する.運動学習タスクへの適用例として,シミュレーションのヒューマノイドの匍匐及び旋回タスク,実機蜘蛛型ロボットの匍匐タスクへ適用した結果について述べる.学習戦略フュージョンのスケーラビリティの実証実験として,シミュレーションのヒューマノイドの迷路タスクへ適用した結果を紹介する.このタスクでは,ロボットは,過去に学習した匍匐や旋回を用いて,ゴールまでの経路を学習する.
近年,自動車の安全性と利便性の向上を目指して、車両周辺の映像を運転者に提示する車両周辺監視システムの開発が行われている.人は運転に必要な情報の大半を視覚によって取得していることから、視覚情報の取得を支援するシステムは、安全性や利便性の向上に重要な役割を果たすことが期待されている。 そこで本研究では、車両全周囲の障害物の有無やその位置、方向の把握が容易な映像を提示する、車両周辺監視システムの実現を目指す。そのために本研究では、(1)全周囲の被写体の高解像度映像を取得する方法、(2)障害物の位置や方向の把握を容易にする仮想視点映像生成方法、(3)仮想視点映像のアーチファクトを低減する方法、について提案する。
最初に、高解像度のカメラ映像を取得する方法を提案する。従来法の高解像度カメラによる映像撮影では、車載環境における非圧縮データ伝送技術が確立されていないことや、圧縮による伝送遅延などの課題があった。提案法は、色ごとに時空間解像度が異なる映像を撮影することで、撮影するデータ量を低減する。そして、色ごとに時空間解像度の異なる画像の時空間解像度を補完することで高解像度高フレームレートの映像を生成する。実画像を用いたシミュレーション実験により有効性を確認した。
次に、車両周辺の仮想視点映像を生成する方法を提案する。従来法では、走行環境には3次元形状を推定できない被写体が存在するために仮想視点映像を生成できなかった。提案法は、さまざまな走行環境において必ず仮想視点映像を生成するために、近似的な幾何形状モデルを用いて仮想視点映像を生成する。この方法は、周辺の幾何形状モデルとして複数の近似3次元モデルを選択的に用いる。そのため、車の走行環境において必ず仮想視点映像を生成することができる。実時間映像生成システムを開発し、実験車両を用いてさまざまな環境において提案法の有効性を確認した。
最後に、仮想視点映像中の局所的な低解像度のアーチファクトを低減する方法を提案する。提案法は、局所的な低解像度領域を低減するために、過去の時系列画像を用いて低解像度領域を高解像度化するアプローチをとる。従来の高解像度化手法は、変化する半影を含む映像を取り扱うことが出来なかった。 提案法は、現在の画像を過去の4枚の画像の線形和でモデル化することにより、画像に自車の影が含まれる場合でも高解像度の仮想視点画像を生成できる。実画像でのモデル検証と合成画像を用いたシミュレーション実験により、有効性を確認した。
無線センサネットワーク(WSN)は,広域に設置された多数の小型センサノードが形成する 無線アドホックネットワークである. 本研究が対象とするデータ収集型WSNは,定期的に各ノードがセンシングした情報を 無線マルチホップ通信によりシンク(基地局)に向けて転送する形式のWSNであり, 環境情報の収集やオブジェクトの追跡などを行うことが可能である. 一般的に,WSNではセンシング対象領域をセンサにより 十分に被覆することと,長時間稼働することが求められる. さらに,より詳細かつ信頼性の高いセンシングを行うため, フィールドのk重被覆(k-cover: 対象領域のどの地点もk個以上のノー ドのセンシング範囲内にある)を満たす効率良いセンサノードの配置が要求される. 既存研究ではk重被覆や稼働時間延長を扱ったものが多数あるが, 対象領域のk重被覆が維持されている期間(k重被覆維持時間) を最大化するための手法は無い. そこで,本発表では3種類の異なるアプローチからのk重被覆維持時間を最大化手法を述べる.
最初のアプローチとして,可動ノードと静止ノードから構成されるWSNについて, k重被覆維持時間を最大化する手法を述べる. 対象とする問題は, Minimum Geometric Disk Cover Problemを含むためNP困難である. そこで,準最適解を実用時間で求めるため, 遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた近似アルゴリズムを提案する. データ収集型WSNでは,シンクノードに近いセンサノードは より遠方のノードのデータを中継するため通信回数(通信量)が多くなり, バッテリが早く枯渇する. この問題を解決するため, 各ノードの通信における電力消費量のバランスがある程度保たれているデータ収集木を構築し, GAの初期解に含ませている. シミュレーションの結果より,100から300ノードのWSNにおいて, 本手法は既存手法に対して140%から190%のk重被覆維持時間が得られることを示す.
二番目のアプローチとして, k重被覆するのに十分な数の静止ノードから構成されるWSNについて, k重被覆維持時間を最大化するスリープスケジューリング手法を述べる. 対象とする問題は, Dominating Set Problemを含むためNP困難である. そこで,本問題の準最適解を短時間で算出するための手法を提案する. 本手法では,各時刻において最小個数のノードをアクティブにすることでフィールドをk重被覆し, 他のノードをスリープさせる. 基地局が計算する際,すべてのノードがスリープしているとみなし, k重被覆への貢献度合順に稼働させるノードをk重被覆が完成するまで順次選択していく. シミュレーションの結果より,100から500ノードのWSNにおいて, 本手法は既存手法に対して, 1.1から1.7倍のk重被覆維持時間が得られることを示す.
最後のアプローチとして,k重被覆維持時間の最大化のための, ノードの故障への耐性をもつスリープスケジューリング手法を提案する. データ収集型WSNでは,ノードの故障が発生するとデータ収集経路が分断され, フィールドの被覆度合いが減少する. この問題に対処するため, フィールドを1重被覆するノードの集合(レイヤ)を複数求め, 各レイヤにおいて独立にデータ収集木を構築し,k個の稼働レイヤを選択する. ノードの故障発生時には,故障ノードをもつレイヤを別のレイヤと切り替えることで対処する. また,ノード間でバッテリ消費量を均等化するため, ノード密度が高い領域における過剰ノードに通信の中継をさせる. 本手法と2番目のアプローチで提案した手法の比較シミュレーションの結果より, 1ノード故障発生時において,本手法は常にk-1重以上の被覆を保てる優位性をもつ一方, k重被覆維持時間は比較手法よりもわずか5%の減少にとどまることを示す.
ウイルス感染等によって誘導されたインターフェロン(IFNs)は、ATPと特殊な2’-5’リン酸ジエステル結合(通常は3’-5’結合)によって結合したアデニル酸オリゴマー、pppA2’p5’A2’p5’A(2-5A)、の合成を促進する。増幅した2-5Aは、RNA分解酵素であるRNase Lを活性化し、ウイルス由来mRNAを分解することで抗ウイルス作用や抗腫瘍作用を発揮させている(2-5Aシステム)。リン酸ジエステル分解酵素PDE12(Phosphodiesterase-12)は、この2-5AをAMPとATPに分解することでRNase Lの活性を抑制して細胞を元の状態に戻す。それ故、PDE12の阻害剤は、IFNsによる坑ウイルス作用増強剤として極めて有望である。
本研究では、ヒトPDE12について2-5A 分解活性の本体であるエステラーゼドメインを調製して、その立体構造をX線結晶構造解析によって初めて明らかにした。解析の結果、ヒトPDE12のエステラーゼドメインはα/βフォールドをもつendonuclease / exonuclease / phosphatase-ホモロジー(EEPH)構造を形成して、2枚のβシートが形成する溝に深い活性部位をもっていることを明らかにした。さらにATPとの複合体の構造解析結果、エステラーゼ活性部位の入り口にATP結合部位が存在することを明らかにした。これらの結果より、PDE12阻害剤の設計に重要な知見を得ることができた。
現実環境を撮影した画像中にCGなどを重畳表示することで情報を付加する拡張現実感において,現実環境と仮想環境の位置合わせを実現するためには,カメラの位置・姿勢を高精度に推定する必要があり,現在までに様々な手法が提案されている. これらの手法では,一般に,現実環境を撮影した画像をCGの合成対象として用いるだけでなく,カメラ位置・姿勢推定にも用いることで,精度の高い位置合わせを実現している.
中でも,ランドマークデータベースを用いたカメラ位置・姿勢推定手法は,structure-from-motion法を用いて半自動でデータベースを構築できることから,低い人的コストで広域な環境に適用できるという特長を持つ. しかし,従来手法ではデータベースに登録されているランドマークと入力画像上の自然特徴点との照合に多くの処理時間を必要とし,実時間でのカメラ位置・姿勢の推定が実現されていなかった. また,カメラの近くに存在するランドマークは撮影位置の違いにより見え方が大きく変化するため,入力画像上の自然特徴点と正しく対応付けることが難しく,ユーザに近い位置にCGを高精度に位置合わせすることが難しいという問題があった.
本発表では,まず,実時間でのカメラ位置・姿勢推定を実現するために,連続フレーム間でのランドマークの追跡とランドマークへの優先度情報の付加により,対応付け処理において用いられる対応点候補数を削減し,計算コストを低減する. 次に,高精度な位置合わせを実現するために,厳密な位置合わせが要求される場所におけるスポット的な位置合わせ精度の向上を目的として,全周レンジファインダにより取得した密な奥行き情報を用いてランドマークの見え方を補正することで,ユーザの位置の近くに存在するランドマークの対応付けの成功率を向上させる. 最後に,提案手法の有用性を示すために,位置に依存した情報の提示を必要とする拡張現実感のアプリケーションへの応用例を示す.
大域非同期局所同期(GALS)設計は,多機能化,大規模化,高速化するVLSIの設計で直面する様々な問題を解決する現実的な手段と考えられている. 一方で,VLSIのテストは製品の信頼性を保証するために必要であるが,VLSIの大規模,複雑化に伴い,テスト容易化設計なしに正常に動作する製品のみを選別する,高いテスト品質を達成することはできない.
同期式回路の代表的なテスト容易化設計方法に,回路中のフリップフロップを外部から制御可能なスキャン素子に設計変更する完全スキャン設計がある. 完全スキャン設計を適用した回路の組合せ回路に対しては任意のテストパターンが印加できるが、通常動作では起こりえない動作をすることがあり正しく動作する回路を不良と判断してしまう過剰テストが行われている.特に遅延故障のテストの際には,回路中に数多く存在するフォールスパスを活性化することがあり,その場合タイミング違反による過剰テストが多発する.フォールスパスを判定することで過剰テストを緩和できるが,多数のパスが存在する大規模なゲートレベル回路に対してフォールスパスを判定することは現実的でない.本論文ではより高位の設計情報を利用し,レジスタ転送レベル(RTL)でフォールスパスを判定し,RTLフォールスパスをゲートレベルで利用する手法を提案する.従来の手法では,論理合成に現実的でない制約を置いていたが,本論文では,論理合成に制約を置かない場合にもパスマッピングを実現するパスマッピング法を提案し,さらに,その制約を緩和する新しい論理合成手法を提案する.
同期式回路のテスト環境を非同期回路に応用するために,非同期式回路に対する完全スキャン設計が提案されているが,組合せ回路,順序素子の両方に対して,検出可能な故障をすべて検出する完全なテストが保証されない.本論文では組合せ回路部分に対して完全なテストを保証する完全スキャン設計を提案し,順序素子の完全なテストを保証する新しいスキャン素子を提案する.
本論文で提案した手法を用いることで,同期式回路に対する過剰テストの緩和と,非同期式回路に対するテスト不足を解消することができるため,GALS設計された回路に対するテスト品質を向上させる事が可能となる.
This work deals with the problems of digital circuit testing while focusing on the early stage of the design process. As the complexity and the number of transistors in digital chips increase, ensuring quality becomes more difficult. In order to make circuits easily testable, design for testability (DFT) is the most popular approach. Full scan design is a mainstream DFT method that effectively addresses the complexity of test pattern generation. The trade-offs of gate-level full scan, however, impact test costs in terms of area overhead and test application time. Moreover, scan-based DFT may change the circuit states during test mode that can be possibly different from that in functional mode. This means that automatic test pattern generation (ATPG) tools may generate patterns that are illegal during functional mode, hence result in over-testing and yield loss.
In this thesis, we propose F-scan, a new DFT technique applicable to functional register-transfer-level circuits. F-scan organizes every register in the circuit in an F-scan-path by maximizing the use of available functional logic and paths for testing purposes. Hence, it effectively reduces the hardware overhead due to test without compromising fault coverage. The creation of F-scan-paths also ensures short test application time.
To complete the DFT method, we propose the following ATPG techniques for F-scan: (a) constrained ATPG for efficient test pattern generation; (b) hybrid model for delay fault testing that can give high fault coverage in hybrid mode and can reduce over-testing in broad-side mode; and (c) F-scan test generation model using standard full scan delay fault ATPG for test generation time improvement.
For all the methods related to F-scan proposed, we conducted experiments thoroughly on benchmark circuits and evaluated the results to prove the effectiveness of these approaches against the performance of conventional gate-level full scan design.
Surgical simulation is a common application of virtual reality in the medical field. Conventionally, surgical simulations depend on preprocessed datasets for volume manipulation. As for patient-specific surgical simulations in the daily routine, they impose both practical and technical challenges. Among which is the prerequisite time-consuming and repetitive data preparation processes prior to the actual simulation. This dissertation proposes an automated framework that generates medical deformable models for intuitive volume deformation and manipulation in patient-specific surgical simulation.
The proposed framework consists of three phases: 1) Initial vertex placement, 2) Mesh quality improvement; and 3) Deformable model parameter settings. The entire framework is built upon a novel variation of a volume mesh called Volume Proxy Mesh (VPM). Vertices of a VPM are assigned to initial locations by feature-based vertex placement method, and the quality of an initial mesh is improved by Particle Swarm Optimization (PSO). The improved volumetric model is then converted into a deformable model by assigning appropriate material settings.
This dissertation presents the framework with each phase explained in detail. Moreover, results and analysis from various simulations are presented to show that the framework is suitable, effective and highly practical for patient-specific surgical simulations in the clinical settings.
Mathematical algorithms have been performing important roles in the modern society; optimization to find the best solution to mathematical problems, classification to find groups in observations, and statistical analysis to find an underlying regularities in various phenomena in the nature. Inspite of the great results that these algorithms have been yielding, their mathematical mechanisms have yet to be so well studied.
In this dissertation, three subjects are analyzed: a genetic algorithm, an SVM with forgetting factor, and neural spike sequences. For genetic algorithms, we propose a new analytical method from a network point of view. First the genetic algorithm is formulated as a netowrk with nodes representing generations connected by two genetic operations: crossover and mutation. Then, its characterstic path length is derived mathematically.
For support vector machines, a forgetting factor is proposed and the asymptotic generalization ability is derived for a simple linearly separable problem. The learning curve is mathematically derived for two types of forgetting factors: exponential and factorial forgetting factors. It is proved that the learning curve of factorial forgetting factors converges to zero in the asymptotic state.
At last, for the analysis on neuron spike sequences, information geometrical method is employed to classify neurons in cortical areas. The interspike intervals of a spike sequence of a neuron is modeled as a gamma process with a time-variant spike rate, and a semiparametric estimation problem is forumulated for the parameters and is solved using an information geometrical method to derive the optimal estimators from a statistical viewpoint.
グリッドやクラウドで処理したデータは,インターネット上に分散するストレージへ出力される.従来,ユーザが目的のデータへアクセスする手段は,ファイル名のみが利用できていた.しかし, 従来のデータアクセスをグリッドやクラウドコンピューティング環境に適用すると,膨大なデータの中から目的のデータをユーザが発見するまでの負担が大きい.一方,データアクセスの際に,データの特性やセマンティクスを用いることができると,ユーザは直感的にデータへアクセス可能となる.
本研究では,ユーザが広域分散処理環境でデータアクセスする際に,メタデータを利用するための広域分散メタデータ管理システムMetaFaを提案する.MetaFaでは,データを処理するワーカーノード上でアプリケーションのI/O性能への影響を低く抑えながら,リアルタイムにメタデータを取得する.メタデータ管理サーバでは,アプリケーションのメタデータスキーマを管理せずに様々なアプリケーションのメタデータを管理することが可能となる.また,従来のファイル名によるデータアクセス手法を,広域分散環境に適用すると,膨大なデータの中から目的のデータをユーザが発見するまでの負担が大きい.本研究ではユーザがメタデータを用いてデータ検索を行い,検索結果からデータアクセスする仮想ファイルシステムPVN-FSを提案する. MetaFaでは,広域分散環境で生成されるデータからリアルタイムにメタデータを取得し,様々なアプリケーションメタデータを管理する.PVN-FSでは,MetaFaが収集・管理しているメタデータを用いてデータ検索を行い,ユーザはアプリケーションを修正することなく,得られた検索結果を仮想ディレクトリに組み込み,データへアクセス可能である.
本研究では,MetaFaにより広域分散環境において様々なメタデータを統一的に管理し,PVN-FSでは既存アプリケーションを再利用可能のまま,メタデータを用いたデータアクセスを実現した.本研究はメタデータを用いた次世代I/Oアーキテクチャの実現に対して貢献すると考えられる.
センサネットワークによって実空間から収集する情報を活用し,従来には存在しなかった新しいサービスの検討が進められている.この際,個人情報などのプライバシ保護が大きな問題となるため,新サービスの実現にあたっては,センサネットワークに適応可能な情報セキュリティ技術の導入を併せて検討する必要がある.一方で,センサが実空間上に配備されることに起因して,センサ自体への攻撃や盗難等への配慮もこれまで以上に必要となる.これは,実空間上での物理的な物や場所へのアクセス制御(フィジカルセキュリティ)に関しても十分考慮する必要があることを意味する.本発表では,センサネットワークを利用したサービスの安全な実現のために,情報セキュリティとフィジカルセキュリティの両面から研究した成果について報告する.本発表前半では,センサネットワークの通信における情報セキュリティについて示す.具体的に,大量のセンサの管理を主目的としたグループにおける鍵管理について詳細に示す.また,アドホックな通信を考慮した鍵管理についても紹介する.本発表後半では,フィジカルセキュリティに関する取り組みとして,センサ計測情報に基づく物理的なアクセス制御システムについて示す.
提案するグループ鍵管理方式は,センサネットワークの応用の多くにおいて必要となるグループ通信の安全性強化に貢献する.本方式はノードの属性に紐つける管理情報を用いて,個々のグループ鍵の管理の仕組みを互いに連携させる.BEMS(Building and Energy Management System)を対象とする実用的な評価を交え,一台のノードが複数の大規模グループに所属する場合に,従来に比べ,ノードのメモリ負荷の64%〜88%を,通信負荷の46%〜97%を削減できることを示す.
アドホックな通信を考慮した鍵管理方式として,センサ間,あるいはユーザの備える機器を含む機器間での通信時において,動的に鍵を生成,共有できる方式を示す.本方式は,センサが取得するユーザ状況,特にユーザの動作に関する情報の類似度に応じて,センサ情報から直接強度の異なる鍵を生成し,似た状況の端末間で自動的に鍵を共有させる.加速度センサを用いた歩行,自動車による移動動作からの鍵生成性能評価の結果,高々2分程度で,4桁のPIN コード相当の強度を持つ共通鍵を共有できることを示す.
最後に,物理的なアクセス制御のために,信用管理の新たな方式を示す.本方式は信用の確立に利用する情報に,ユーザが提示したディジタル証明書に加え,センサで取得可能なユーザのプレゼンス(存在位置) を導入する.プレゼンスの導入に際しては,プレゼンスに信頼度というパラメータを与え,確率モデル(拡張を加えた隠れマルコフモデル)に基づく信頼度評価によってプレゼンスの不確実性を考慮する.被験者とRFID センサを用いた評価実験を通じて,確率モデルを用いた提案法により,得られるプレゼンスのrecall を約1.8倍(0.94以上) に向上できること示す.その結果,信用確立における利便性や安全性を向上できることを示す.
Forward-backward algorithm is an important Dynamic Programming (D.P.) algorithm especially in sequence labeling. This algorithm enables us to avoid explicit enumeration of all the possible output candidates and provides an efficient way to accomplish computation tasks in both learning and prediction steps of sequence labeling.
In recent years, there is a series of studies in formalization of D.P. based on algebraic and graph-based frameworks. Such frameworks can subsume many important computations by instantiating a concrete algebra. The most of the instances shown in the past research are suitable only to computation tasks in the prediction step, where the main concern is to find the best or next bests solution in the search space. On the other hand, the learning step, which is numerical optimization procedure of models, are also central computation in sequence labeling. However, only a few instances are useful in the learning step, and various important computations in the learning step do not adapt to any algebraic and graph-theoretic frameworks.
In this dissertation, I first introduce algebraic and graph-theoretic notations and review the past studies of D.P. related to sequence labeling. Next, I introduce some systematic ways to compose complex algebraic systems from simpler ones. I also show novel advanced instances of algebraic frameworks of D.P. These show promise in various numerical calculations in the learning step. Finally, in order to demonstrate the actual benefit of the algebraic instances proposed in this dissertation, I propose a novel sequence labeling model which utilizes one of proposed instances of the framework in its learning step. I also show the quantitative result of the model.
画像処理により写真撮影時の手ぶれを防止する電子式手ぶれ補正機能がデジタルカメラに搭載されている.現在実用化されている電子式手ぶれ補正は,画像復元式と画像重ね合わせ式の2種類である.画像復元式は,ジャイロセンサで撮影中の手ぶれを画像劣化関数として検出し,撮影画像に対して画像劣化関数の逆変換フィルタを適用することで撮影画像の手ぶれを補正する.しかしながら,ジャイロセンサによる手ぶれ検出精度が低い(画素単位の検出誤差が発生する)ため,補正画像にリンギングノイズが発生するという問題がある.画像重ね合わせ式では,通常よりも短い露光時間の画像を連写し,それらの画像を位置合わせし,加算合成することで手ぶれを短露光画像程度に低減する.しかしながら,通常露光画像に比べて,合成画像のノイズが増大するという問題がある.
そこで今回,上記課題をそれぞれ解決する2つの新技術,「長短露光画像復元式」,「長短露光画像合成式」を提案する. 「長短露光画像復元式」は,通常露光画像と短露光画像を連写し,それらの画像から通常露光画像の手ぶれを高速・高精度に検出し,画像復元により手ぶれを補正する手法である.本方式により,従来の画像復元式手ぶれ補正に対して,リンギングノイズの低減,および完全電子化(ジャイロセンサの不要化)を実現した.「長短露光画像合成式」は,通常露光画像と短露光画像を連写し,ぶれが気になるエッジ部はぶれの少ない短露光画像から画素値を取得し,ノイズが気になる平坦部はノイズの少ない通常露光画像から画素値を取得するというコンセプトに基づき,2枚の画像を加重加算合成する手法である.本方式により,従来の画像重ね合わせ式の課題である,手ぶれ補正効果とノイズ低減の両立を実現した.
さらに,上記2種類の提案方式を実装したデジタルカメラの試作機をそれぞれ製作し,性能評価実験を行った.その結果,「長短露光画像復元式」の補正段数は0.7〜1.4段,「長短露光画像合成式」の補正段数は2.0段であり,従来手法と比較して,補正性能が大幅に向上することを実証した.
本研究開発により,高性能な電子式手ぶれ補正の応用研究が加速され,民生カメラの小型化・低価格化・低消費電力化に大きく貢献できると考える.
2011 年 7 月に予定されているアナログテレビ放送の停波に伴い,一般家庭へのハイビジョンテレビ (以下,HDTV) の普及が加速して進んでいる.この普及により,より高画質の映像を身近に感じるようになり,画質へのこだわりがより高画質方向にシフトしていくことが十分予想される.現在,HDTV で扱われている HD 画質より高画質な映像として,4K 超高精細映像 (以下,4K 映像) があげられる.4K 映像とは画素数が 4096x2160 pixels で構成される映像で,HDTV の画素数 1920x1080 pixels の縦横各 2 倍以上,面積比にして 4 倍以上の画素数を持つ映像である.既に映画業界にデジタルシネマとしての必要性が存在しており,従来のアナログフィルム文化からデジタルデータ文化にシフトする上でとても重要な映像技術として捉えられている.しかし,この 4K 映像を取り扱うための機器の現状は,カメラやテレビ,プロジェクタ,録画再生装置,放送伝送媒体に至るほとんどのものが HDTV で使用している規格をそのまま 4K 映像用に応用し利用しているもので,まだ一般に普及する段階には来ていない.加えて,4K 映像を遠隔地に伝送する方法もほとんど確立しておらず,まだまだこれからの段階であると言える.ただ,唯一の考えられる伝送方法としては,IP ネットワークを使用する方法で理論的には世界のどこへでも伝送することが可能になると考えられ,かつ,従来の衛星放送などの設備費用などに比べて,とても安価により遠方まで伝送が行えるという利点もあげられる.
本研究では,4K 映像を IP ネットワークを使用して遠隔地に伝送する手法を確立することを目標とし,これまで実験的に行われてきた Layer 2 の技術である VLAN 設定を用いた伝送方法に加え,VLAN 設定を使用しない Layer 3 のまま伝送する方法についての提案と検証実験を行ない考察する.また,以前より行なってきた,アナログ放送で使用されていた標準画質映像および地上デジタル放送で使用されているハイビジョン映像の組織内配信の手法確立についても合わせて述べることとする.