Abstracts of Doctor Thesis 2000
平成12年度 情報科学研究科 博士学位論文内容梗概
柏木一彦
「動的保護が可能な動的構築機構を有する
オペレーティングシステム・サーバに関する研究」
本研究では,計算機ハードウェア上に直に実装されたオペレーティングシステ
ム(ベースOSと呼ぶ)上で,ユーザにベースOSとは異なった仮想計算機環境を
与える応用プログラム(OSサーバと呼ぶ)を対象として,動的保護が可能な動
的構築機構を有するOSサーバを実現し,その性能を評価する.
本論文で対象とする環境は次の通りである.
(i)OSサーバは,小さなカーネルと,カーネルから処理を依頼される複数のサー
バタスクから構成される.
(ii)OSサーバと,それを利用する複数のユーザタスクは,ベースOSが提供する
1つの仮想アドレス空間内でのみ動作している.
(iii)当該仮想アドレス空間は,カーネル空間およびユーザ空間と呼ぶ2種類の
空間から構成されており,カーネルはカーネル空間に,サーバタスクとユーザ
タスクはユーザ空間にあり,各々静的固定的に保護されている.
本論文では,このOSサーバに拡張を加え,(i)サーバタスクのカーネル空間へ
の動的な取り込み/追い出し,(ii)新たな機能の動的追加/取り込み/追い出し/
置換,(iii)カーネルスケジューラの動的置換,が行えるとともに動的保護が
可能な動的構築機能を有するOSサーバを実現した.
さらに,性能評価を行い,(i)サーバタスクの取り込みによるシステムコール
の実行時間の短縮,(ii)動的保護のオーバヘッド,(iii)カーネルスケジュー
ラの動的置換の効果,などを定量的に明らかにした.
情報科学研究科 専攻主任